PL学園・伝説のコーチが明かす、立浪和義の高校時代とリーダーの資質「先を見る力は群を抜いていた」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Okazawa Katsuro

 清水がPLのコーチ時代、現役だった立浪から電話がかかってくることがあった。

「〇〇は孝悦さんの教え子ですか?」
「そうや、なんでや?」
「あいさつができていません。孝悦さん、ちょっと甘かったんじゃないですか。ちゃんと教えときましたから」

 そうした同様の電話を何度も受けたという。

「あいさつ、礼儀というと、『古き良き......』みたいに言う人がいるけど、社会に出たら昔も今も関係ない。あいさつ、礼儀というのは、人としての基本。いつの時代も、どんな世界でも関係ないですよ。そこがええ加減な人間は、仕事でも野球でも気づかないうちに落ちていっている。タツは監督になったからではなく、現役時代も評論家時代もその姿勢は変わらない」

立浪和義と桑田真澄の共通点

 清水には以前にも話を聞いたことがあったが、高校野球の指導を振り返りながら「チームはキャプテンで決まる」と語っていたことがあった。1987年の話題にもなり、あの時のPLは立浪がキャプテンだったからこそ春夏連覇の結果がついてきたとも話していた。

「タツはプレーで引っ張ったのはもちろん、常に厳しさを持って接していた。高校時代のキャプテンは、同級生を束ねられるヤツじゃないとアカンのです。あの学年は17人の選手全員が春か夏どちらかのメダルを持っているんですけど、それはチームがまとまっていた証拠。タツは、多くは語らないけど、プレーで引っ張って、やることをしっかりやるからみんながついてきた。それに厳しいばかりでなく、あの男前の顔でたまに冗談も言うしね(笑)」

 清水の高校3年時は、春夏とも甲子園準優勝だった。この差をネタに、立浪が清水をいじってくることもあったという。

「春夏準優勝と連覇は『僕と孝悦さん、キャプテンの差ですね』とニヤッとして言うてくる。そんなこと、僕は先輩には絶対に言えない。『おまえ、よう言うな』って言うと、『それが言えるのは先輩の器です』みたいに返してくる。ほんまうまいこと懐に入ってくる。僕に対しての接し方という意味では、タツと桑田が似ている。桑田は僕のひとつ下で、バッテリーを組んでいましたけど、甘え上手。タツから『孝悦さんは僕と桑田さんに弱いですよね?』って言われたことがあったんですけど、そのとおり。悪いところがないから怒ることもないし、そもそも怒られにくいタイプ。ほんまにできた男で、野球界でもタツのことを悪く言う人はいないんじゃないですかね」

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