大谷翔平が右腕に巻いている黒いベルトって何? リアル二刀流をサポートする秘密兵器 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

 同じことが投手のピッチングにも言え、「強度×量=負荷量」の管理が試合でパフォーマンスを発揮するためのポイントになる。八木氏が説明する。

「負荷が溜まりすぎている時に無理して強度の高い投球をしてしまうと、抵抗できる筋肉も疲れているからケガをします。そういう形で負荷をモニタリングして、『今日はどれだけのトレーニング、負荷量を積むべきか』を見ながら、身体を徐々につくっていきませんかというのがパルスのコンセプトです」

 ヒジへの負荷を測る方法は、投球ごとに内側の靭帯にどれくらいのトルクがかかったかをセンサーで計測する。トルクは回転と加速により、どの程度の質量がかかったかを表したものだ。これに身長と体重、腕の長さと重さを鑑み、アルゴリズムでストレス値を算出する。

 こうしてヒジへの負荷を可視化できる意味は、投手にとって極めて大きい。指導する私立武田高校や東広島ポニーでパルスを採用する高島誠トレーナーが説明する。

「それほど知識がない指導者でも、パルスを見れば『ヒジへのストレス値が高い。おかしいね』と異常に気づくことができます。ヒジにストレスがかかりすぎるとケガしやすくなるし、質の高いボールをたくさん投げられません。そういう投げ方をしていると、球数が増えるごとに球の質が落ちてくる。だから試合終盤につかまりやすくなります。パルスをうまく使えばケガの予防はもちろん、パフォーマンスアップにもつなげることができると思います」

パルス購入にかかる費用は?

 パルスに強い興味を示したひとりが、ソフトバンクの左腕投手・和田毅だった。シーズンオフに地元・出雲市で主催する小学生のイベントで、この器具を試せるようにしてほしいとオンサイドワールドに頼んだという。

 ある小学生が計測の1球目を全力で投げ、2球目は肩の力を抜いて投げると、2球目のほうがアームスピードは速く、かつエルボートルクが下がった。つまり肩の力を抜いて投げたほうがパフォーマンスアップし、故障リスクも下がったということだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る