日本ハム退団で蘇ったハングリー精神。楽天・西川遥輝「野球人として一度死んだ身。はい上がるしかなかった」 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 ピッチャーのサイズや投球フォームなど、タイプの違いは西川からすれば関係ないことだ。自分の間合いに相手を引き込むことによって、ピッチャープレートからホームベースまでの距離を制圧できる。

「ホームベースからプレートまでの長さは変わらないものなんで。そこは自分の感覚をしっかり持ってやれていますね。ストライクでも『打てない』と思ったらバットを振らないし、ボール球でも『打てる』と思ったら打ちにいく、みたいな感じですかね」

 今シーズンは、それがより高度に再現できているのは事実だが、西川の爆発力のすべてかといえばそうではない。

シーズンをやりきりたい

 成績とは技術や経験の積み重ねの結晶のようなものだ。昨年までの11年間で1232安打を記録していることからも、西川には野球選手として強靭な背骨がある。

 今の彼を支えているのは、むしろ心だ。

「その部分だとは思いますね」

 西川が静かに呟き、首肯する。

「一度、死んだ身として、野球人として『ここでもう1回はい上がらないといけない』って気持ちですかね」

 シーズンが終了した昨年11月。所属球団を含めたすべての球団と交渉できる「ノーテンダー」いう制度を提示されたことによって、西川は日本ハムを離れることとなった。楽天ほか自分に興味を持ってくれる球団があったとはいえ、移籍先が決まるまでは時折ネガティブな感情が襲うのは無理もなかった。

「もう、野球ができないんじゃないか?」

 シーズンオフであっても休まずトレーニングに励む。邪念を振り払うように体を動かしていても、心の霧を意識する自分がいた。

「『チームが決まった時に全力で動けられるように、体の準備はしないといけない』と思っていたんですけど、なかなか決まらなかったんで。不安な気持ちが一番大きかったです」

 昨年12月末、西川の楽天入団が決まった。「死んだ身」と言いきるほどの煩悶を経てたどり着いた新天地で、西川はふつふつと沸き起こる、懐かしき感情に触れた。

 成り上がりの精神。ガツガツ感だ。

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