2022.05.11

大学時代は公式戦登板ゼロ→社会人経由でヤクルト3位入団。柴田大地が歩んだプロまでの道程

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 毎日150球を投げ続けるのは苦しく、「今日はやめておこうか」と頭のなかをよぎったこともある。だが「自分で決めたことだから」と、自然とブルペンに足が向いた。

「3年秋で0勝のヤツがプロを目指すなんか、はっきり言って無理というか。もしかしたら、ケガしていたかもしれない。でも、そこを乗り越えないと、プロに行けてないだろうという自分もいたんです。このあたりがすごく難しいところですが、リスクをわかってやるのは、自分の決心だと思うんです」

 迎えた春のリーグ戦では14試合のうち13試合に登板して10勝、5完封を記録。リーグ優勝に導いてMVPに輝き、全日本大学野球選手権でも好投して、秋に中日から4位指名された。

選手の伸びる時期を想像する

 プロ野球人生は3年間で終わったが、指導者に転身した今、かけがえのない財産になっている。プロを目指して入学してくる有望株から、球速100キロしか出ないなかで努力する教員志望者まで、未来ある若者たちと一緒に歩むうえで自身の経験は何ものにも代え難いものだ。

 誤解なきように記しておくと、辻は投げ込みを推奨しているわけではない。むしろ自著『エース育成の新常識』の帯には、「その投げ込み、ホントに必要!?」と書かれている。

 辻は自身の経験や大学院で学んだコーチング、トレーニングなどをうまく落とし込みながら、DeNAの大貫晋一や西武の松本航、ロッテの東妻勇輔、ヤクルトの吉田大喜、中日の森博人をプロに送り出した。そうして日体大は「投手王国」と言われるようになるなか、昨年、新たに巣立ったのが、ヤクルトに3位指名された柴田大地だった。

「柴田には『大学で活躍しよう』と一度も言っていないです。大学の指導者なのに変な話ですね(笑)。でもプロに行けると信じていましたし、それを伝え続けたつもりではあります」

 大学時代に右ヒジの痛みを抱え、公式戦で一度も投げていない柴田は日本通運経由でなぜプロに進めたのか。その裏には、辻が指導者として大切にしていることがある。それが「見極め」だ。

「大学から社会人野球に進むのが厳しい選手の場合、だからこそ大学でできるだけ多くを吸収してほしい。そう考えて実戦に多く投げさせようとか、もっとこういう指導をしてあげようと考えています。