ヤクルトの2000年ドラ2位投手、鎌田祐哉が振り返るプロ入り秘話と試練続きだった現役時代

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato

「元プロ野球選手」と自分からは言わなかった

 鎌田は現在、東京23区の北部を中心に不動産事業を展開する株式会社城北不動産の氷川台本店に勤務(東京・練馬区)。2013年、34歳の時に入社し、この春で10年目を迎えた。不動産の世界でもそろそろベテランになりつつある。
 
インタビュー中に笑顔を見せる鎌田 村上庄吾●撮影インタビュー中に笑顔を見せる鎌田 村上庄吾●撮影この記事に関連する写真を見る 4年前に取材した時、鎌田は練馬区内で主に新築の戸建て物件を販売するセールスマンだった。「まだまだ覚えることも多いので、これからです」と語っていたが、今はセールスの仕事以外に「仕入れ」も担当。不動産を買い付ける業務で、億単位の金額が動く仕事だ。その大役を任されるということは、それだけ鎌田が会社に貢献してきた証しでもある。

「現役を離れてもう10年になりますし、"アスリート"という感覚はだいぶなくなりました」と語る鎌田は、すっかり不動産業界の人だ。が、気づく人は気づく。185cmの長身で、筋肉のつき方や醸し出す雰囲気が一般の人とはちょっと違うからだ。

「初めて会うお客さんに『昔、何かやってました?』と聞かれることがすごく多いですね。名刺を出すと『ああ、ヤクルトの!』と気づく方もいらっしゃいます」

 2度目に会ったお客さんから「ネットで調べたんですけど、鎌田さんってプロ野球のピッチャーだったんですか?」と言われることもよくあるとか。「『あ、調べました?』って返しますけどね(笑)」

"元プロ野球選手"という過去は、セールスの際に大きな武器になる。相手が野球好きならなおさらだ。だが、鎌田は不動産業界に入ってしばらくは「自分からは言わない」ことをモットーにしてきた。先に言うと「じゃあ不動産のこと、そんなに知らないでしょ」と思われるかもしれない。それを言うのは、不動産の知識を十分身につけ、自信を持ってお客さんにすべてを説明できるようになってからにしよう、と心に誓ったからである。

「今では、家を見に来たお客さんが、野球のユニフォームを着たお子さんを連れて来る時などに『あ、野球が好きなんですか? 実は......』と言うこともありますよ」

 そうやって自分から切り出せるようになったのも、営業マンとして成績を挙げてきたからこそだ。 

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