ロッテ新人捕手・松川虎生の能力をOB清水直行が絶賛。「観察眼」と「嗅覚」が佐々木朗希の完全試合を実現させた (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Kyodo News

 本来であれば、高卒の新人捕手はそのふたつの技術やブロッキングなども含め、覚えなければいけないことが多い。でも、そうしたことがすでにクリアできているので、配球や駆け引きといった次の段階にいけています。

 あと、データ班(チーム戦略部)がこれまでに収集・分析してきたものを、松川がしっかりと活かせているように見えます。これは、裏方の方たちの力がすごく大きい。そうしたデータも交えつつ、松川を"スーパーキャッチャー"に育てていくためのプランを進めているのかなと思います」

先を見据えた配球

 4月10日の試合前まで三振がひとつと、三振数が少ない打者・吉田正尚からも3つの三振を奪った。1打席目は直球から2球連続のフォークで空振り三振。2打席目は初球と2球目にカーブを連投し、フォークを2球続けて空振り三振。3打席目は直球を3球続けたあとにフォークで空振りを奪い、追い込んだあとに膝元の直球で見逃し三振に切ってとった。

「オリックス打線のなかでもっとも三振しない打者が吉田ですよね。序盤から三振を立て続けに奪って順調にきていたところで、『やられるんだったら、このあたりかな』という捕手としての嗅覚も優れていると思います。試合の早い段階(吉田の2打席目)でカーブを決められたというのが最後まで効きましたね。

 吉田に投げたカーブは、オリックスの他の打者にも意識させることになりましたし、効いたと思います。そういう意味では、それ以降の投球に"勇気を持たせる変化球(カーブ)"だったと思います」

 吉田は試合後、佐々木との対戦を「相手のほうが上だった」と振り返っていた。

「あの2打席目で松川が2球カーブを要求して、おそらく佐々木は首を振ってないと思うんですけど、あの打席でカーブを使われたというところが、『相手のほうが上だった』という感覚になるんじゃないですかね」

 9回、完全試合まであとひとりとなって迎えたのは、不振でスタメンから外れていた代打の杉本裕太郎。フォークを3球続けるという、この試合で一度も見せていなかった配球で空振り三振を奪った。

「やはり完全試合を意識したのか、松川も最後はバットに当てさせたくなかったんでしょう。とにかくパスボールだけは防ぎつつ、相手が空振りするボールを(求めた)。それで、最後はフォークで攻めたんでしょうね」

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