ラオウに「鬼ダウンスイング」を授けた根鈴雄次が語る覚醒秘話。中日・根尾昂にも「きっと合う」 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 撮影●小川正行 photo by Ogawa Masayuki

――杉本選手は4年前のオフから根鈴さんの道場に通うようになりました。当時と比べて、どんな変化があると感じていますか。

根鈴 あの恵まれた体ですから、スイングは当時からエグくて飛距離もありました。ただ課題も明白で、アウトコースのフォーシーム、スライダーを前で打とうとしすぎて、凡退するケースが目立っていた。そこで「体を大きく使って、(ボールにバットが届きやすい)キャッチャーに近いところでボールを捌いてみよう」と伝えました。バットのヘッドを落とすスイングにすれば、よりキャッチャーに近い位置で捉えられるので、フォームを見直すところから始めたんです。

 本人の性格もあり、根気強く段階を踏んでフォームを固めていきました。すると徐々に、外のボールに対して、遠心力を活かしてライト方向に大きな当たりを打てるようになった。あとは、高めの速いボールもきれいな縦軸のスイングで捉えるのが可能となり、打率も上がっていった。「3割打てたら、30本は打てる」とずっと思ってきたので、昨年はその通りになりましたね。

根鈴氏が実演した「縦のスイング」。インパクト時のバットが縦になっている根鈴氏が実演した「縦のスイング」。インパクト時のバットが縦になっているこの記事に関連する写真を見る――結果的にホームラン王のタイトルを獲得しています。

根鈴 僕が考える好打者の条件として最初に思うのが、「ファストボールをいかにミスなく打てるか」ということ。メジャーで通用する選手と、そうでない選手の線引きはそこが一番明確です。ラオウさんの場合は、ストレートへの絶対的な強さがあって、昨年のパ・リーグでストレートの打率、長打率共に1位を記録しています。

 個人的には、アダム・ジョーンズ選手との出会いも大きかったと思います。あれだけの経験値があるバッターを間近で見られたことで、打撃の引き出しも増えていった。あとはオリックスの首脳陣が、ラオウさんの新しいスイングを変にいじらず、我慢して起用したのも大きい。社会人のドラフト10位でしたから、他の球団だったらもっと早く見切られていたかもしれませんよね。本人も毎年、「いつクビになってもおかしくない」と危機感を持っていました。

――今季はマークも厳しくなると思いますが、ラオウさんにどんな期待をかけていますか?

根鈴 1年間チャンピオンチームの4番を任された経験が、より活きてくると思いますね。あえて課題をあげるなら、技術的なところよりは精神的な部分でしょう。ラオウさんは本当に真面目で、ちょっと生真面目すぎるところもある。昨季もオールスター前に少しナーバスになっていた時期もあった。そういう部分が顔に出てしまうので、そこだけ改善されてくると、もっと打席での雰囲気も出てくると思います。

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