「トミー・ジョン手術で球速が上がる」は都市伝説。元中日の吉見一起「完全復活できたわけではなかった」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

トミー・ジョン手術を経験した元中日の吉見一起氏だが、完全復活はしなかったと語るトミー・ジョン手術を経験した元中日の吉見一起氏だが、完全復活はしなかったと語るこの記事に関連する写真を見る 術後には、1年近くに及ぶリハビリが待ち受けている。それがどれだけ大変か、元ヤクルトの館山昌平が大卒2年目の初体験を振り返る。

「ドクターから全治12〜14カ月と言われ、そこに向けてのプランニングをしっかり行ないました。『一段抜かしをしたら、ゴールを目指すうえで絶対よくない。ちゃんとやって戻ろう』と言われ、必ず一段ずつ階段を踏むようにやっていました。全治1年だったら365段という思いで、毎日クリアするべきことがある。1週間ごとに変化があり、それがぼやけていたりもするんですけど、7段ごとに色がついているようなイメージでした。振り返ると早かったけど、やっている時は本当にしんどかったです」

 名古屋市の病院で手術を受けた元中日の吉見一起は「後悔がある」と明かす。

「もっと下調べしてリハビリをすればよかった。理学療法士に丸投げして、ある期間までいくと『じゃあ投げようか』、ここまでいくと『距離を離れようか』という感じで、自分がどういう状況かがわかっていませんでした。『トミージョン手術の1年後に化ける人がいる』とよく言われるので微かな希望を抱いていましたけど、リハビリは辛かったですね。ヒジを故障した時に肩やいろんなところも痛めるなど、想定外のことがたくさんありました。1年後に投げることができたけど、完全復活できたわけではなかったです」

 館山が1度目のトミー・ジョン手術を乗り越えて勝利を重ねた一方、吉見は手首の尺骨手根屈筋の痛みに悩まされ、思うようなピッチングができなかった。40年以上前から現在までリハビリの知見が蓄積されてきたとはいえ、投手たちにとって大変な時間が待っているのは変わらない。

球速アップの代償

 そんななかで数少ない希望と言えるのが、吉見も口にしたような"都市伝説"だ。「トミー・ジョン手術をすると球速が上がる」というものである。

 もちろんそんなわけはなく、長いリハビリ期間にトレーニングを積み、パワーアップした結果としてボールが速くなったと考えられる。実際、術後に球速アップする投手は少なからずいる。

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