160キロ投手・ソフトバンク杉山一樹の才能は開花するか。やり投げをヒントに目指す力感のないフォーム (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

技術はメンタルを凌駕する

 杉山の昨季と今季の投球フォームを見比べると、明らかに変わっている点がある。昨年まではリリースの瞬間に力が入っているが、今年は一連の動作でスムーズに行なわれているのだ。

「力感がないってことですよね。小手先で投げようとしたら、力感が出ると思うんですよ。体の中心部を使って、体の足とか腕が勝手についてくる。それだと体の中心しか強く動かしてないので、ゆっくりに見えると思うんです。でも、力は出ている。

 なので、今はたぶん、8割の力で投げて、次は10割で投げてとかできないです。常に同じ動きをしようという練習をしているので」

 昨年までは、制球を乱すと無意識のうちに小手先で投げていた。そこでトレーニングを重ね、動きを身体に染み込ませてピッチングの土台を固めようと取り組んでいる。

「心技体ってあるじゃないですか。技術はメンタルを凌駕すると思うんですよね。技術さえあれば、ブレることもないですし。そういう意味では、同じ動きを毎回できれば狂うこともないないですし、小手先で操って崩れることもない。技が一番のテーマだと思います」

 先発ローテーションの座を掴み取ろうとオフから己に磨きをかけたが、春季キャンプが始まる直前、新型コロナウイルスに罹患した。

「コロナで出遅れて、チャンスが少ないなかで結果を求めないといけない立場でした。キャンプの時はよかったけど、(オープン戦が行なわれた)山口の宇部球場と神宮球場はすごく独特で慣れるのに少し時間がかかりました。でも、そこを気にしているところがまだまだなと。(実力のある投手なら)あまり気にせず投げることができると思うので」

 3月13日に敵地で行なわれたオープン戦のヤクルト戦では、初回に2四球を与えて3点を奪われた。ストレートが捕手のかなり高めに浮くこともたびたび見られたが、普段は登板機会のない神宮独特の環境に手こずった。

「マウンドに立つと、キャッチャーが僕と同じくらいの高さにいる感じだったんです。普通なら傾斜があって、(キャッチャーまで)下がって見えるはずですけど、真横に見えていたので。錯覚だと思うけど、その捕手目線で投げていたら球が吹いてくるんですよ。実際、傾斜はあるので。そこを気にしたら(指に)引っかけ出して」

 3回以降は立て直し、5回まで無失点に抑えた。試合のなかで修正できたのは、先発投手として好材料だろう。

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