160キロ投手・ソフトバンク杉山一樹の才能は開花するか。やり投げをヒントに目指す力感のないフォーム (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

オフにディーン元気と合トレ

「意識は1個しかないんですよ。軸回転、回転運動をどうやってうまく求めるか。それだけですね」

 ラティーノたちを力強いストレートと切れ味鋭いフォークで抑えるなか、杉山は投球フォームへの課題を口にしていた。

 ソフトバンク入団から2年、3年と重ね、杉山はケタ外れのポテンシャルを見せる反面、プロとして不可欠な能力が足りなかった。周囲がマネできないような強い球を投げても、それでカウントを稼ぐことができない。一軍で投げるには大切な"安定感"が明らかに不足していた。

 24歳になったばかりの2021年オフ。筆者はやり投げの日本代表選手たちとトレーニングを行なう千賀の取材に都内某所へ訪れると、杉山の姿も一緒にあった。

「自主トレの前から投擲(とうてき)種目のトレーニングを結構やっています。やりは800グラムぐらいあって、遠くに飛ばす力やケガをしない体の動かし方を詳しく教えてもらいました」

 やり投げ日本代表歴のあるディーン元気、小南拓人、佐藤友佳がさまざまな体勢からメディシンボールを投げると、千賀や杉山より見るからに強い力を放出していた。野球の硬式球は150グラムほどに対し、やりは800グラムある。やりを遠くに投げるには瞬発力が必要で、選手たちは柔軟性と筋出力を高めるトレーニングを繰り返している。

 千賀や杉山が求めたヒントは、ここにあった。杉山が説明する。

「やり投げの選手たちは、人間の体の動かし方として強いなと感じました。野球は小手先で操れてしまうスポーツなので。メディシンボールスローとかボールを投げること、走ることもそうですし、全て体幹を使って体の四肢を動かすことを意識しています」

 プエルトリコで話していた回転運動から、現在のやり投げ選手とのトレーニングはつながっている。人は身体をどう使えば、より安定的に、高い出力を発揮できるか。それは故障予防や、再現性を含めたパフォーマンスアップに結びつくものだ。

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