費用約10万円、復帰率90%...身近になったトミー・ジョン手術を受ける前にやるべきこと (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 こうした影響がのちにどう出るのか。トミー・ジョン手術のリハビリを50件以上担当し、島村医師とも連携する高島誠トレーナーが説明する。

「小中学生は成長期で、軟骨の状態で骨が固まっていないから指導者はデリケートに扱う必要があります。高校生くらいで骨が固まったら、今度は靭帯に負担がかかります。そこで小中の時に剥離骨折などをしていると、土台が脆い状態なので、投げすぎるとヒジが痛くなってしまう」

 ヒジの故障は登板過多など環境的要因もあれば、過度の負担がかかる投げ方を続けてきたという技術的な理由もある。

 島村医師は「多くの場合は全身のコンディションが悪くて痛くなっている」と説明したが、投球メカニクスに起因するところが大きい。たとえば下半身と上半身の連動がうまくできていなかったり、柔軟性が足りないために投球動作で前方に行けなかったりした場合、腕の力に頼りやすくなる。そうした投げ方を続けていると、最悪、トミー・ジョン手術に至るケースがあるという。

PRP療法の効果

 ヒジにメスを入れるのを避けたい場合、PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)も選択肢のひとつだ。自身の血液を採取して遠心分離器にかけ、組織が再生するために必要な要素が含まれる層を抽出し、損傷部位に注射して治癒を促進する。トミー・ジョン手術は実戦復帰までに約1年かかる一方、PRP療法ならずっと短い期間での回復を期待できる。

 ただし前者は保険適用されるのに対し、後者は自由診療だ。ヒジへの効果はエビデンスがなく、アメリカから輸入するキットは原価で6〜7万円ほどかかる。

 PRP療法は田中将大がニューヨーク・ヤンキース時代の2014年に行なって復帰を果たした反面、ロサンゼルス・エンゼルスで受けた大谷翔平はのちにトミー・ジョン手術に至った。それほど個人差が大きいが、医師の見解はどうだろうか。

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