空耳で起きた謎のスタメン、もうひとつの「ヘディング事件」など。まさか!が起きたプロ野球珍記録の数々 (3ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • photo by Kyodo News

●球史に残る大事件が重なった日

 珍プレーの元祖と言われるのが、フジテレビの『プロ野球 珍プレー・好プレー大賞』放送のきっかけとなったともいう『宇野ヘディング事件』だ。1981年8月26日、中日ドラゴンズ先発の星野仙一が読売ジャイアンツを相手に無失点の好投を続けていた7回2アウトに事件は起きた。巨人の山本功児の打球はショートへのポップフライ。球場の誰もがイニング終了を確信。しかし、打球は宇野勝のおでこに直撃。

「これは『ヘディング事件』や『おでこキャッチ』としてプロ野球ファンの間で有名なエピソードですが、奇しくも同日、もうひとつ球史に残る事件が起きているんです。それは、阪神の江本孟紀さんの『ベンチがアホやから野球がでけへん』事件。ヤクルト戦の8回途中のピンチでベンチから指示がなく、結果として打たれて降板。それに怒った江本さんが、中西太監督や首脳陣を猛批判し翌日に現役引退を発表しました。これほど大きなふたつの出来事が重なるというのは奇跡的。プロ野球珍プレー、珍事の記念日を設けるとしたら8月26日ですね」

 しかし、この元祖・珍プレーからさかのぼること4カ月。もうひとつの「ヘディング事件」が起きていたという。

「4月19日、広島カープの山本浩二さんが巨人戦で同じようなプレーをしているんです。でも、宇野さんの珍プレーがここまで有名になったのは、当時、巨人が連続試合得点記録を更新中で、それを阻止しようと星野さんが並々ならぬ意気込みでマウンドに立ち、試合の注目度が高かった。宇野さんのおでこに弾かれて転がっていったボールを慌てて追いかけていったレフトの大島康徳さん、その間に2塁ランナーは帰って痛恨の失点、打者の山本巧児さんこそホームアウトにしたものの、その横でグラブを地面に叩きつけた星野さん、大爆笑する観客など助演の力も大きいのではないでしょうか」

●盗塁死の珍記録保持者

 塁上の走者が盗塁を試みてキャッチャーに刺される、牽制球に対して帰塁が間に合わない。どちらもアウトをひとつ献上し、走者はベンチに下がり、盗塁死が記録される。しかし......。

「2012年3月31日、日本ハム対西武の試合でのこと。3回1アウト、一塁ベースの走者は中島宏之(当時の表記は中島裕之)。ピッチャーの武田勝の牽制球に誘い出され、一・二塁間で挟まれてしまいます。しかし、セカンドの田中賢介の悪送球のおかげで無事に帰塁。この時点で、中島の盗塁死と田中の失策が記録されます。そのあと、3回2アウトとなってから、塁上の中島はもう一度、牽制球に飛び出してしまい、二塁の手前でアウトになりました」

 1イニングで同一選手が2回盗塁死を記録した唯一の珍記録となった。

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