「名球会入り」投手の難しさ。ミスター完投、昭和・平成の怪物、炎のストッパーさえも達成できなかった

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

200勝に届かなかった大投手たち

 田中のほかに200勝が期待できる投手はどれだけいるのか。通算150勝以上を挙げている投手を列挙したい。

177勝=石川雅規(ヤクルト/42歳)
172勝=ダルビッシュ有(パドレス/35歳)
156勝=前田健太(ツインズ/33歳)
150勝=涌井秀章(楽天/35歳)
※ダルビッシュ、前田は日米通算記録

 仮に1年で10勝ずつ挙げたとしても、ダルビッシュで3年近く、前田、涌井も5年近くの歳月を要する。さらに年齢を考慮すると、そのハードルはより高くなる。

 ひと昔前の投手は登板数こそ多かったが、「球数マネジメント」はなく、連投や酷使もあったため、衰えや限界は突然訪れた。

 かつて松岡弘(元ヤクルト)は36歳となった1983年に11勝をマークし、200勝まであと10勝と迫ったが、のちの2年間でわずか1勝しか挙げられず、1985年に現役を引退した。引退時、同い年の安田猛投手コーチ(当時)は「自分が松岡の登板試合をもっとつくるなど、配慮しなくてはいけなかった」と悔やんだ。

「ミスター完投」と呼ばれた斎藤雅樹(元巨人)は、1989年から2年連続シーズン20勝をマークするなど、驚異的なペースで勝ち星を積み重ね、「斎藤が200勝できなかったら、誰が達成するんだ」と言われるほど確実視されていたが、右腕や内転筋の故障に苦しみ、36歳での引退を余儀なくされた。200勝まであと20勝だった。

 江川卓(元巨人)はプロ2年目から8年連続2ケタ勝利を挙げ、「昭和の怪物」にふさわしい活躍を見せていたが、1987年に右肩痛により突如引退を表明。通算135勝、32歳での引退に、「もし高校卒業後にプロ入りしていたら......」と多くのファンが嘆いた。

 ちなみに、松坂は通算170勝。2008年にメジャーで18勝を挙げた翌年からケガとの闘いが始まり、そこからはほぼリハビリ生活を余儀なくされた。「ケガさえなければ間違いなく200勝は達成していた」と語る野球解説者も多く、松坂の能力がいかに突出していたかがわかる。

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