なぜオリックス吉田正尚は異様に三振が少ないのか。ピカイチの打撃術と「同じようなスイングをしない」意識 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 産経新聞社

打撃で意識していること

 吉田の言葉から高い向上心と結果に対する貪欲さが伝わってくる。プロ野球選手ゆえに、それはある意味誰しもが持つべきものであるが、吉田ほど気持ちよく宣言する選手はいない。こうした自信に満ちた発言は、自分のバッティング技術に自信があるからでもある。たとえば三振数は、2018年のキャリアワーストの74三振から64、29と減らし、昨年は455打席で26三振だった。非常に三振が少なく、強打でありながらバットコントロールの技術はピカイチだ。

「三振しないところは意識しています。そのためにカウントだったり、追い込まれて相手のウイニングショットがくる時は、それを予測しながら打つ方向を決めたり、ボールを叩くポイントを変えて、同じようなスイングをしないようにしています」

 フルスイングを持ち味にしている選手は、パ・リーグに複数、存在する。ソフトバンクの柳田悠岐、西武の森友哉などがそうだ。

「試合前とかに、対戦チームの選手ともコミュニケーションをとっています。話をしますけど、僕はバッティングは基本的に人それぞれだと思っているので、あまり参考にはしないです。ただ、おもしろそうだなっていうことは試したりもしますが、感覚的に合う合わないもありますからね。人を意識するよりも常に自分にいいものを見つけていくという姿勢のほうが大事だと思います」

 自分ならではのフルスイングを実現するために吉田は、いろんなことに投資している。たとえば自分の体だ。しっかりと筋力トレーニングをして、必要な箇所に必要な分の筋肉をつけていく。「全身バランスよく鍛える」と吉田は言うが、この7年間で体つきはかなり変わった。また、バットへのこだわりも非常に強い。職人と話をしながら作り込み、バットケースには乾燥剤を入れて管理している。

「バットによって、自分の成績が変わってくるので、そこはすごく大事にしています。シーズン中はなかなか変更できないので、シーズン後に職人さんのところに行き、シーズン中に思ったことを話して、芯の太さを変えたりして複数作ってもらい、そのなかから決めます。あれこれ悩みすぎるのもよくないので。そうして最高の1本を作ってもらって、できるだけ多くのヒットやホームランを打ちたいと思っています」

 さらに自分の映像を見て、分析し、次はどんなアプローチをしていけばいいのか。そうしたことを試合ごとに繰り返している。それは、現在のキャンプ期間も変わらない。

「1日1日レベルアップすることだけを考えています。向上心を持って取り組まないと、ダメになるのが早くなりますし、自分が目標とする高い数字を残せないので」

 目指すべき高い目標、三冠王を達成すれば、海外への道も見えてきそうだ。昨年、東京五輪では全試合に出場して世界と対峙、金メダル獲得に貢献した。世界の舞台で戦うことの面白さは、戦った選手にしかわからない。

「東京五輪で日の丸をつけて戦うのは、日本シリーズとはまったく別ものでした。本当に緊張しましたし、日の丸の重みも感じました。この経験は、選ばれた選手しか味わえないものですが、これが今後自分にどう活きてくるのか。高いレベルでプレーする意識は野球人として持っていないといけないものだと思います」

 メジャーへの道は、自分が結果を出した先についてくるものだ。その前に今シーズン、吉田には達成したい目標がある。

「パ・リーグで連覇をしたいですね。簡単ではないことはわかっています。ここ数年、パ・リーグは非常にレベルが高いので、どこが上がってくるのかわからない。僕らもチャンピオンチームとしてではなく、チャレンジャーの気持ちでいかないと足元をすくわれてしまいます。昨年同様、ひとつひとつ勝ちを重ねていって優勝を果たし、日本一を獲りにいきたい」

 2020年以来のフル出場を果たし、2004年、松中信彦以来の三冠王を達成すれば、リーグ優勝はその背中についてくるはずだ。

FMヨコハマ『日立システムズエンジニアリングサービス LANDMARK SPORTS HEROES

毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る