ロッテ松川虎生はどこがすごいのか。史上3人目の偉業も現実味、ルーキーらしからぬ技術と貫禄 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 打者からすると、消えるような「魔球」を確実にミットに収めて、もっとすごいのは捕球するや、次の動作にすぐさま移れることだ。

 おそらく本人は「捕球するだけでいっぱいいっぱいです」と言うだろうが、体はしっかり反応しているのだから舌を巻く。

古田の捕球技術と城島の貫禄

 先発の佐々木からマウンドを引き継いだ4年目左腕・小島和哉の投球を受ける姿を見て、「なるほど......」と思った。

 小島の120キロ台のスローカーブを、ギリギリまで見て、プロテクターに当たるかという瞬間にサッとミットを出して捕球した。

 キャッチングが達者な捕手は、例外なく捕球点が体に近い。つまり、バッテリー間の18.44メートルをフルに使って捕球するから、快速球でも、高速変化球でもミットが間に合って、球道をすべて見せてくれるから球審は安心してジャッジができ、ストライクも増える。松川のキャッチングは、そんなアドバンテージをフルに活用しているように見えるし、その姿は往年の名捕手・古田敦也を彷彿とさせた。

 こんなシーンもあった。右打者のアウトコースを狙ったストレートを佐々木が引っかけてしまい、さすがの松川もミットが間に合わず、ボールをうしろに逸らしてしまった。「どうするかな......」と思って見ていたら、後方へ飛んでいくボールをチラッと一瞬見ただけで、何事もなかったように球審からボールをもらって、投手に返した。

 普通のルーキー捕手なら、マスクを外して投手に謝り、それから自軍のベンチを気にするものだ。それがルーキーの初々しさというものだろう。なのに、松川は何事もなかったようにやりすごしたのだから、「もうベテラン捕手だな」と驚きを通り越して、笑ってしまった。

 このいい意味での貫禄、厚かましさは、若き日の城島健司とダブる。捕手にはそういう"腹芸"が必要な時がある。

 内野ゴロが飛んで、一塁ベースのカバーに向かう時も、立ち上がってから動くのではなく、しゃがんだ姿勢からそのままスタートできる。下半身の強さ、股関節や膝、足首の柔軟性がある証拠で、それだけでも捕手の適性が見える。

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