阪神・江越大賀「12球団で一番もったいない選手」返上へ。ラオウ杉本との自主トレで8年目の覚醒となるか (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

オリックス・ラオウからの金言

 そんな杉本は2021年に大きな飛躍を遂げた。オリックスの4番打者に定着し、打率.301、32本塁打、83打点。本塁打王のタイトルを獲得し、リーグ優勝に大きく貢献。「ラオウ」の愛称は一躍全国区になった。

 もう、なりふり構っていられなかった。江越は関係者を通じて、杉本の自主トレに参加させてもらえるよう懇願した。

「今までは球団の裏方さんに手伝ってもらって、甲子園で自主トレをやっていたんです。十分すぎる環境だったんですけど、やっぱり何かを変えないといけない。もうダメなら最後だし、お願いするしかないなと」

 杉本は江越にこんな金言を授けている。

「いかに自分の『打ちたい』という欲を捨てられるか。俺はそれを意識して打席に入っているよ」

 江越の悩みも、まさにこの言葉に集約されていた。「打ちたい」という思いが募れば募るほど、江越は力んでバットをこねる悪癖があった。

「僕は右手が強すぎるみたいで、力むと右手首が早く返ってしまうんです」

 さらに、大学時代から頭が投手方向へと突っ込む弱点もあった。当然、江越自身も自覚していたが、どうしても矯正できずにいた。

 杉本が信頼する根鈴雄次(元3Aオタワ/アラボールベースボール「根鈴道場」)、高島誠(Mac's Trainer Room広島)という技術指導者の助言を受けつつ、江越は自分の打撃を根本的につくり直した。スイング軌道が「アッパースイングになった」と評されることもあるが、江越の体感は違う。

「イメージは『タテに振る』感じです」

 根鈴の教えは「バットを落とせ」というものだった。重力に任せてバットを落下させてから、振り上げる。振り上げるところだけを見ればアッパースイングに見えるが、それ以前の「バットを落とす」感覚がキモなのだ。江越は「余計な力が入らなくなりました」と効果を実感する。

 高島からはグリップが2本並んだスイング矯正具「シークエンスバット」を授けられ、右手でバットをこねるクセの矯正を図った。

「手首を返さないようにするというより、ほぼ手に力を入れないイメージです。そうすれば、手首はちょうどいいところで勝手に返るので」

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