NPBで輝いたセカンドの名手たち。現役唯一のゴールデン・グラブ・レジェンズとなった菊池涼介の「見えないファインプレー」 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 セ・リーグのセカンドで長らく名手として君臨したのが高木守道(中日)だ。1960年から活躍しているため、ゴールデン・グラブ賞に輝いたのは3回だけだが、バックトスの名人として名を馳せた。1974年にプロ入りした阪神の掛布雅之はこう証言する。

「高木さんのバックトスは、上から投げたのと同じくらいのスピードで二塁ベースに入る遊撃手に飛んでいった。『すごい!』のひと言でした」

 その名のとおり、まさに「守りの道」を極めた守備の達人だった。

【球史に残る名二塁手たち】

 4回受賞の篠塚は、一、二塁間のゴロに対して、全身がピンとまっすぐに伸びて捕球するファインプレーを幾度となく披露した。グラブさばきも見事だったが、球際の強さも超一流だった。

 西武時代にパ・リーグとなる8回受賞の辻発彦も、球史に残る名プレーヤーのひとりだ。なかでも印象に残っているのが、1992年のヤクルトとの日本シリーズ第7戦。1対1で迎えた7回裏一死満塁の場面で代打・杉浦亨の一、二塁間の強烈なゴロを捕球すると、そのまま回転しながらバックホームでランナーを刺す超美技。以前、辻に「なぜそんな守備ができるのか」と問うと、辻は平然とこう言った。

「バットにボールが当たる前から、飛ぶ方向がわかるんです」

 今でいうところの"ポジショニング"というわけだが、投手の決め球と打者のスイングから、前もって適切な位置を予測していたという。玄人好みの守備で西武の黄金時代を支えた。

 また、2004年から6年連続で受賞した荒木雅博(中日)は、俊敏な動きと守備範囲の広さ、華麗なジャンピングスローに定評があった。今回、レジェンズの遊撃手部門に選ばれた井端弘和との「アライバ」は球史に残る名二遊間コンビとして、後世に語り継がれるに違いない。

【審判が語る菊池涼介のすごさ】

 菊池は辻の8回、荒木の6回を上回る、2013年から9年連続ゴールデン・グラブ賞に輝いている。2020年には、コロナ禍の影響で試合数は減少されたが、103試合、503守備機会無失策の「守備率10割」という前人未到の偉業を達成した。

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