中日・根尾昂、4年目の正念場。レギュラー奪取のカギは会心の一打よりもポテンヒットだ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 2年目の岡林勇希やルーキーの土田龍空が快打を重ねていくなかで、根尾は打席のたびに自らのスイングにちょっとした迷いを感じなら振っているように見えた。だから、150キロ近いストレートに差し込まれてしまう。それが昨年夏の根尾の姿だった。

 逆に、岡林や土田のバッティングには"思いきり"があった。まだ技術はつたないかもしれないが、だからこそ「振っていくしかしょうがないだろ!」という開き直りが、いい意味でスイングに勢いを与えていた。そんな覚悟が、内野の間を抜ける打球やポテンヒットにつながっていた。

 インパクトの精度なら、根尾のほうが上だろう。ただ、スイングの迫力という点では、岡林や土田に軍配が上がる。

 プロ野球の世界で、会心のスイングから納得のいく打球でヒットが生まれることなど半分もないと、ある選手から聞いたことがある。なかには、内野安打やポテンヒットが打てないと、プロでメシは食っていけないと話す選手もいた。

【立浪新監督のもと外野一本で勝負】

 昨シーズンの根尾の打率を調べて驚いた。一軍では72試合に出場して打率.178。ならば二軍では、最低でも.250は打っているだろうと思っていたら、34試合で打率.157だった。こんなにショックな結果もなかっただろうが、そろそろ腹のくくりどきかもしれない。

 今年に入って、根尾はトレーニング施設で肩や下半身の可動域を改善して、自分のイメージどおりに体が動くようになったという。そしてこんなことを口にしていた。

「打ち方は固まってきている」

 やはり、そこか......。形から入るというのは、根尾のスタイルなのだろう。もちろん、形は大事だ。ただ実戦の打席では、意識はマウンドの投手だけでちょうどいいように思う。

 いずれにしても、根尾の4年目は始まった。今年秋のドラフトでは、高校時代にバッティングケージの横でスイングを論じ合った中川や山田も、有力候補になることだろう。プロ野球の"先輩"として、彼らに違いを見せつけるためにも、正念場の1年になる。

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