平石洋介が明かすソフトバンク退団の真相。「必要とされている間はホークスで」から考えが変わった理由

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

平石洋介インタビュー(前編)

 かつて自分がプレーした場所、監督として率いたチームに屈し、平石洋介の2021年シーズンは終焉を迎えた。

 10月23日、楽天生命パーク宮城。4位のソフトバンクは残り3試合を全勝すれば、クライマックスシリーズ進出への望みをつなぐことができた。しかしこの日、3位の楽天との直接対決に敗れ、5年連続での日本一を逃すどころか8年ぶりのBクラスが決定した。

昨シーズン限りでソフトバンクを退団した平石洋介昨シーズン限りでソフトバンクを退団した平石洋介この記事に関連する写真を見る

【組織で戦っていく難しさを痛感】

「そりゃあ、悔しかったですよ」

 平石は開口一番、そう言った。

 どこか淡々としている。まるで、昨シーズンの敗戦が、予定調和のとれた結果であるかのようにも聞こえた。

「野球はそう甘くはないわなって。選手が悪いとかじゃなく、ホークスという組織として戦っていく難しさっていうか。原因はいろいろあるんでしょうけどね」

 報道などで伝えられている敗戦の一因に、戦力が不安定だったことが挙げられる。

 ジュリシベル・グラシアルやアルフレド・デスパイネ、リバン・モイネロのキューバ勢の離脱。リードオフマンの周東佑京、守護神の森唯斗の故障も響いた。そこに松田宣浩、中村晃ら主力の不振も相まって、投打が噛み合う試合が少なかったこともある。

 さらに、ソフトバンクにとってはベンチワークも挑戦的な1年でもあった。言うなれば、「二大巨頭」体制だ。

 チームを5度の日本一へと導いた監督の工藤公康とWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で指揮を執った小久保裕紀。日本代表トップチームの指揮官がNPBの球団でコーチになった例は、今年のソフトバンクが初めてだった。

 それだけではない。小久保は現役時代、絶対的なリーダーとしてチームを牽引してきた男だ。ふたりのカリスマの求心力が噛み合えば、「常勝」ソフトバンクの威厳をより誇示できるはずだった。

 しかし、結果は4位。

「それは僕らコーチにも責任があることじゃないですか」

 平石が世間で囁かれている風評を否定するように口を開く。

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