なぜ稀代の知将・野村克也は「憎たらしいほどかわいい」と新庄剛志を愛したのか (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

野村克也監督(写真左)を「野球の父」と慕っていた新庄剛志野村克也監督(写真左)を「野球の父」と慕っていた新庄剛志この記事に関連する写真を見る グラウンドでも、ノムさんに対して気を遣う選手やチーム関係者がほとんどだった。ノムさんも捕手仕込みの観察力、洞察力でそれを察知するため、どうしても距離ができてしまう。それが新庄剛志にはなかった。

「ミーティングを短くしてください」
「ピッチャーをやりたいです」

 ほかの選手なら絶対に言わないようなことを、臆することなく無邪気に言い放つ。そんな新庄が「憎たらしいほどかわいかった」のだろう。

 ある時、ノムさんに「いつも素敵なお召し物ですね。沙知代さんが選ばれるんですか。それともスタイリストがついていらっしゃるんですか」と聞いたことがある。するとノムさんはうれしそうな表情を浮かべこう語った。

「ヴェルサーチなんや。ネクタイはたくさんあるぞ。迷った挙句、いつも同じものを締めてしまう」

 昨年12月、「野村克也をしのぶ会」に参列した新庄が明かした。

「ヴェルサーチは僕が勧めたんです」

 新庄はノムさんを「野球のお父さん」と慕った。父親は、息子が自分の道を歩んでくれるとうれしいものだ。日本ハムの監督に就任した新庄は、選手に自分の考えを記した「新庄ノート」を制作したという。

 このキャンプで話題となったいろいろなポジションを試させるのは、まさにノムさんのやり方の踏襲である。

「僕のことを宇宙人と呼んでいましたが、ノムラ野球+宇宙人野球なら面白いと言ってくれるでしょうね」

 天国でサッチーとともに、新庄監督の活躍を楽しんでいるに違いない。

(文中敬称略)

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