イップス、制球難、ベンチ外...ドラフトまで4カ月、高梨雄平は突然サイドスロー転向を決めた (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

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 もうひとりの捕手である柏木秀文は、高梨より3学年上の先輩で、試合でバッテリーを組むこともあった。ブルペンでは「いいボールを投げるな」と感じた柏木だったが、試合になると高梨についてこんな印象を抱いた。

「いい時はいいけど、ダメな時はダメ。試合になるとコントロールがままならない感じで、自滅しちゃうところがありました」

 高梨がコントロールに苦しんだ原因は、大学時代にイップスを発症したことにあった。大学時代に挙げた勝利は3年春の完全試合が最後で、以降は極度の制球難に苦しめられた。18.44メートルが途方もなく遠く感じられ、ホームベースよりはるか手前にボールを叩きつけてしまう。高梨は「今だから笑える話になったんですけど」と言って、当時の苦悩を振り返った。

「僕は真剣に『思ったところに投げられないのは、18.44メートルを投げ切る筋力が足りないからだ』と考えて、めちゃくちゃ筋トレしたんです。筋トレをすると数値は伸びるし、体は大きくなるし、目に見えた成果が出やすいじゃないですか。それでのめり込んで、球は4〜5キロ速くなったんですけど、悪いフォームはそのままなので。速い球をホームベース前に叩きつける人になっていました」

 あまつさえ左肩を痛めたことで「これは方向性が違うな」と高梨は悟り、動作系のトレーニングを重視するなど立て直しを図った。JX−ENEOSの捕手陣は「コントロールが悪い」と評したが、本人からすれば「結構いい状態で社会人に入れた」という実感すらあった。

【社会人野球の世界では劣等生】

 それでも、アマチュア最高峰の舞台は甘くはなかった。好不調の波が激しい高梨は、大事な試合で起用されることはなかった。本人も「これは厳しいな」と感じていた。

「大学の頃から状態がいい時は抑えられるけど、悪い時は普通に打たれていました。悪いなりに抑える試合がほとんどなかったんです。社会人で悪い日なんか、目も当てられないような感じで。監督の立場からすれば、一発勝負の世界で出してみなきゃわからない選手は使いにくいですよね」

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