ベイスターズ、最下位からの反撃へ。最先端テクノロジーを強化・育成にフル活用 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【2015年にトラックマンを導入】

 NPB球団がMLBを飛び越え、どのように「世界一」を目指すのか。チーム側の目指すべき方向性として壁谷部長はこう語る。

「チーム側としては、具体的に『この決定戦で勝つ』という定義をしているわけではないですが、ワールドシリーズが世界最高峰だとすると、そこで優勝するくらいの水準のチーム力を作りたいというイメージです」

 DeNAが思い描く道を進むと、必然的に選手年俸も上がっていくだろう。「そう持っていきたいですね」。壁谷部長がそう視野に入れるのは、世界一の球団経営にはビジネスオペレーションとベースボールオペレーションをともにうまく回すことが不可欠になるからだ。

 現在、NPBの市場規模は1500〜2000億円に対し、MLBは1兆円を優に超える。そうした環境下で、DeNAはどのように世界一を狙うのか。

 ベースボールオペレーションにおけるチーム戦略としての核になるのは、チーム戦略部「R&D」グループだ。「Research & Development」の略で、企業が自社領域に特化した研究開発を行ない、新たな知見や技術を獲得して他社との差別化を図り、競争力を拡大していく。DeNAは「研究開発」部門を2017年シーズンオフに立ち上げ、中心になってきたのが壁谷部長だ。

「トラックマンを2015年から入れて分析できる人を翌年から雇い、本格的にデータサイエンスをできる人を雇ったのが2018年。今はバイオメカニクスやデータサイエンスをできる人が複数います。DeNA本社のAIエンジニアとのプロジェクトを始めるなど、球団としてやれることが6年前とは大きく変わってきました。それとともにチームへのフィードバックも、より効果的にできるようになってきました」

 簡潔に言うとバイオメカニクスは動作解析のことで、データサイエンスは各種データを統計学やプログラミングなどの専門的知識を用いて有益な知見を引き出すことだ。NPBのなかでベイスターズはこの分野にとりわけ大きな力を入れ、さまざまに成果が表れている。

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