新庄監督は名将の器⁉︎ 破天荒発言に隠された野村克也や落合博満と符合する野球観

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

 これは現役時代に内野を守っていた時期があり、二死満塁で俊足の左打者が打席に立つと嫌だったという経験に則っている。それに内野手が焦って悪送球になれば2点入る可能性もある。

 そして4番候補として挙がったのが、2020年のドラフトで2位指名を受けて入団した五十幡亮汰だ。中学時代、東京五輪にも出場した日本屈指の短距離ランナーであるサニブラウンに100mで勝利したこともある俊足選手である。ただ打ってランナーを還すのではなく、新庄監督なりの得点の仕方を模索しているのだろう。

 6番に強打者を置くという発想は、これも現役時代、自身が任されることが多かった打順で、走者がいる場面で打席に立つ機会が多かったという経験からきている。

 また、監督就任会見では「優勝は狙わない」と発言し、周囲を驚かせた。監督というのは、前年最下位であっても、「優勝を狙う」と言わなければ、指揮官としていかがなものかという監督論が浸透していた。しかし新庄監督には、基本ができていないと次に進めないという信念があり、これもじつに理にかなっている。

 思えば野村もヤクルトの監督就任時、「1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目に花を咲かせましょう」と3年計画を掲げ、有言実行を遂げている。新庄監督のなかにも、チーム強化プランというのが明確にあるのだろう。

【ファンの目が選手を育てる】

 日本ハムは、世界がまだ見ぬボールパーク「エスコンフィールド北海道」の開業を2023年3月に予定している。スポーツビジネスで言うところの「スマート・ベニュー」(スポーツを核とした街づくり)を目指しているようだ。

 栗山英樹前監督の退任が発表されると、後任として稲葉篤紀、小笠原道大の名前が挙がったが、フタをあけてみればアッと驚く新庄の就任だった。

 3年連続5位、しかもダルビッシュ有、大谷翔平、中田翔、斎藤佑樹など、次々と看板選手がチームを去った。人気低迷、ファン離れを危惧した球団が、新庄に白羽の矢を立てたことが推察される。

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