「満足しているのはコーチだけ。つぶされた選手を見てきた」今岡真訪が力説するコーチのあり方 (3ページ目)

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 ロッテでは、安田にも大山と似た気質を感じるという。安田は2020年から優先的に起用されながら、突き抜けた成績を残せずにいる。藤原も山口も、高い期待を受けながらレギュラー奪取には至っていない。そんな教え子に伝えたいことを聞くと、今岡さんはじっと考え込んでからこう答えた。

「『自分で考えて、自分ですべての責任を負え』ということですね。このひと言があれば、いろんな経験をしてきた彼らには伝わると思います」

 生活面では「挨拶、返事をしっかりする」「時間を守る」といった、社会人として身につけておくべき部分は厳しく指導してきた。だが、練習後に打ち込みたい選手がいれば、基本的には選手ひとりで打たせるようにした。ひとりで打つことで、自分自身で考える習慣を身につけてもらいたかったからだ。

 球団に理念や要望を伝え、今やロッテの環境は整いあらためて球団の方には感謝したいと今岡さんは言う。そして最後に期待を込め、こう語った。

「安田、藤原、山口、佐々木。彼らがロッテを常勝軍団にしていかないといけません。ひとりで考え、ひとりで行動し、人に甘えない。すべて自分で背負えるようになれば、今度は彼らがチームを背負って強くなるんじゃないかと思います」

 土を耕し、種を撒き、水を与えた。今はまだ小さな芽かもしれないが、今岡さんは大きな花が自らの力で咲く日を心待ちにしている。

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