今年は清宮、藤浪も別チーム選手に弟子入り。「呉越同舟自主トレ」で急成長した男たち (2ページ目)

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato
  • photo by Sankei Visual

【「宮本塾」で鍛えられ球界を代表するショートに】

 一軍でレギュラーをつかんだ若手が、守備の面でもさらなるステップアップを目指し、同じポジションを守る他球団のベテランに弟子入り志願するケースもある。その代表例が、2012年、宮本慎也(ヤクルト)の主宰する合同自主トレに参加した坂本勇人(巨人)だ。

 坂本はこの時プロ6年目。ショートのレギュラーを張っていたが、毎年失策が多く、時にはスタメンを外されることもあった。そこで名手・宮本に教えを請うたのである。

 きっかけは前年の球宴で、守備について宮本にアドバイスをもらったことだった。とはいえ、「宮本塾」に参加していた総勢10名ほどの選手はヤクルトの選手ばかり。そこに巨人の選手が単身飛び込んでいくのは勇気の要ることだ。

 実は、後押しをしてくれたのが巨人・原辰徳監督だった。「勇人が行きたいなら、オレが言ってやる」と宮本に話を通し、異例の参加が実現。

 宮本いわく「勇人が来ることによって、ウチの選手もバッティングを見られるじゃないですか。だから別になんとも思わなかった。大先輩が『喝!』とか言ってましたが(笑)」(BS日テレ「日本プロ野球名球会SP2021」より)

 宮本は、坂本のキャッチボールを見た段階で「基本をちゃんと教わってないな」と感じたという。「キャッチボールは、単なるウォーミングアップではない。スローイングとキャッチングの練習なんだ」という意識づけから始まり、ブレない送球をする方法、正しい捕球術、足の運び方などをあらためて坂本に叩き込んだ。時には宮本がバットを握り、厳しい言葉も交え坂本にノックの雨を降らせるシーンも。坂本は当時、こう語っている。

「僕が知らないことを、宮本さんからたくさん聞けている。しんどいけど楽しい。足の使い方など、今まで考えていたこととは全然違った」

 おかげで、今や球界を代表する名ショートとなった坂本。今も自主トレでは若手たちに、宮本から学んだキャッチボールの大切さを説いているそうだ。

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