神の足・鈴木尚広が「走りにくかった」捕手5人。「走ることの怖さ」を教えられた選手は?

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 中村選手に対して企画数は少ないですが、ほとんど成功せず、よく刺されたなというイメージがあります。むしろ、中村選手にしか刺されなかったというくらいのイメージです。

 ほかのキャッチャーで意識したのは、阪神に移ったあとの城島(健司)さんです。人って、イメージがすごく重要じゃないですか。城島さんとの対決はあまりなかったですが、一塁に立って「対城島」ということが出てくると、やっぱり意識せざるを得ないというか。座ったまま二塁に投げられるくらい肩も強いし、年齢を重ねても衰えが見えない。城島さんと勝負する時は、息をのんで戦っていました。

 パ・リーグとの対戦ではほとんど刺されたことがありませんが、嫌だと感じたキャッチャーは細川(亨)さんです。肩が強かったですからね。それでも、高低や左右に投げミスはありましたし、西武にはクイックが速いピッチャーはそんなにいませんでした。パ・リーグは全体的に、「クイックが速い」というイメージはそれほどなかったです。

 ピッチャーのクイックが緩いと、ランナーは走りやすくなります。いいスタートさえ切れれば、キャッチャーが慌ててくれるから、自動的に投げミスが生まれやすくなります。キャッチャーからすれば、捕った時点で走者がどれだけ進んでいるか、感覚的にわかります。だからランナーのベースにあるのは、必ずいいスタートを切って、キャッチャーが投球を捕った時点でどれだけセカンドの近くまで行けているかということです。

 逆にクイックがよくて、牽制が速くて、キャッチャーの総合的なクオリティが高かったら、ランナーはなかなか初球から走れません。カウントや状況を読んだり、「ここ」という場面で仕掛けたりしていくことになります。

 ただ不思議なもので、相手の対策が緩くなると、自分も少しホッとするというか、いくらでも行けるなと思って強引にスタートを切る場合もありました。そうなると、どこかにスキが出て、刺されることもありました。

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