神の足・鈴木尚広が「走りにくかった」捕手5人。「走ることの怖さ」を教えられた選手は?

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

 巨人時代に12年連続で2ケタ盗塁を記録し、代走での通算最多盗塁数(132)を誇る鈴木尚広氏。「代走のスペシャリスト」「神の足」と言われた同氏が、2002年に一軍デビューを飾ってから2016年に現役を退くまで、とくに「走りにくい」と感じた捕手は誰だったのだろうか。盗塁をめぐる緻密な駆け引きについて聞いた。

代走での盗塁数132の日本記録を持つ元巨人の鈴木尚広氏代走での盗塁数132の日本記録を持つ元巨人の鈴木尚広氏この記事に関連する写真を見る

【どうしたら盗塁できるのか】

 僕が一軍に上がったばかりの頃、一番走りにくいと感じたのはヤクルトの古田(敦也)さんです。キャッチングがうまくて、捕ってからの動作も速いし、送球もブレない。かつ、ランナー心理もわかっている。

 僕にとってテレビでずっと見ていた方なので、「古田さん」という特別なイメージが植えつけられていました。だから古田さんと勝負しようというより、「ああ、古田さんか......」という感じになり、圧倒的にマウントを取られていました(笑)。

 ヤクルトでは館山(昌平)さん、(オーランド)ロマンもクイックと牽制が速かったですが、僕が一軍に上がったばかりの頃によく対戦したのは高津(臣吾)さんと古田さんのバッテリーです。一軍で1年目の2002年には9回二死から盗塁を試みて、刺されてゲームセットということもありました。

 それで走ることの怖さを知り、盗塁の技術をさらに研究し、どうしたら成功できるかを突き詰めていくきっかけになりました。いかにして、古田さんから盗塁を決められるか。そこから頭を切り替えたのが、いかに古田さんを意識しないで、自分を信じてスタートを切れるかです。そうして視点を切り替えることができて以降、走る回数を増やしていけました。

 トータルで見れば、古田さんに対して8割くらい成功していると思います。それでも最初のイメージとして「現状ではかなわない」というのがあったので、古田さんには走りにくいという印象があります。そこから自分のなかで起きた盗塁改革みたいなものは、古田さんによって教えてもらった部分が大きく影響しています。

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