鈴木誠也はいかにして日本の4番になったのか。名伯楽が語る「目力がすさまじかった」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

「1時間なら1時間と、決められた時間のなかでどれだけ量をこなせるか。選手が飽きずに集中してやれるか。そのためにいろんなティーバッティングのドリルを用意しました。選手が弱ってきたら、コーチが発破をかける。それがカープの練習でした」

 内田さんだけでなく、多くの球団関係者が鈴木の練習量の豊富さを証言する。練習中の鈴木について印象に残っていることを聞くと、内田さんは「目力」を挙げた。

「誠也は相手の目をジーッと見て話を聞くんですけど、その時の目力がすさまじいんです。いかにも強いハートを持っている子だなと感じました。たとえ叱られても、『なにくそ』という思いが姿勢に表れてくる。こちらはいかにして、誠也に『やってやろうじゃねぇか』と思わせるかを考えていました」

 鈴木はプロ3年目の途中から一軍定着を果たし、4年目の2016年には打率.335、29本塁打、95打点と大ブレイク。鈴木の活躍ぶりを評した「神ってる」は新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。

【誠也の負けん気があれば大丈夫】

 内田さんは愛弟子の活躍を喜ぶ一方、「日本代表の4番になるようなスラッガーになるとは思わなかった」と驚きを隠さない。

「カープは金本(知憲)がいた頃から、シーズンオフにはジムに通ってパワーをつける選手が増えていきました。誠也もウエイトトレーニングをしたことでエンジンが大きくなって、技術にパワーがついてきたのでしょう。打球スピードが上がって、打球が上がればホームランになるようになりましたから」

 アメリカ球界ではロックアウトが長期化していることもあり、現時点では鈴木の移籍先すら決まっていない。それでも、MLBでの活躍を目指す鈴木に対して、内田さんは「メジャーで成功している右打者は少ないから、ぜひとも活躍してもらいたい」とエールを送る。鈴木は活躍できると思うかと尋ねると、内田さんは少し考えてからこう答えた。

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