引退表明も兄・川端慎吾の言葉で復帰を決意。女子野球のレジェンドが新チームを結成 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

ーー昨年の日本一の瞬間、お兄さんは人目もはばからずに泣いていましたね。

川端 あの涙は、単なるうれし涙だけではなかったと思います。私たちには想像できないぐらいのプレッシャーのなかでようやく日本一を達成した安心した涙だったんじゃないのかなと私は思いました。

ーーさて、ヤクルトは悲願の日本一を達成し、連覇を目指す2022年がスタートしました。あらためて、慎吾選手に期待することなどはありますか?

川端 去年の活躍を見ていて、本当に兄はすごいなって感じました。だけど、私としてはもう一度、レギュラーとして活躍している姿を見たいですね。怖いのはケガだけなので、ケガだけはしないでねと祈りつつ、妹として兄を応援したいと思います。

【「もう一度、女子プロ野球を復活させたい」】

ーー続いて、友紀さんご本人について伺いたいと思います。2010年の女子プロ入りから12年が経過しました。2019年オフには一度、引退を表明しました。

川端
 あの時は、全然身体が動かないということはなかったけど、故障もあって思うような練習ができませんでした。私はガンガン練習したいタイプなので、故障のために練習量を抑えなくちゃいけないということにもどかしさを感じていました。そんな状態で引退を発表したんですけど、その年のオフに兄の自主トレに見学に行ったら、エイジェックグループの栃木ゴールデンブレーブスの寺内(崇幸)監督がいらして、エイジェックには女子野球チームもあるということを知りました。兄も「もう一度、やってみたら」と後押ししてくれたんで、もう一度やってみることにしました。

ーー復帰先となったエイジェック女子硬式野球部では選手兼ヘッドコーチという役割でしたね。

川端
 コーチと言っても、ほぼ選手専任のような形でプレーさせてもらったので、特に負担もプレッシャーもなかったです。それでも、この3年間は指導者としての目線で大切なこと、必要なことを学べたので私にとっては有意義な時間でした。

ーーそして、年明け早々には今年から新たに「九州ハニーズ」を立ち上げることを発表しました。新チーム結成の思いを教えてください。

川端
 九州は野球熱が高いですが、女子野球チームは数えるほどしかないので、まだ盛んではない地で女子野球を活性化したいし、根づかせていきたいです。福岡ソフトバンクホークスだけではなく、地元の方にはぜひ、女子野球も一緒に盛り上げて応援していただけたらうれしいです。

ーー現在では、埼玉西武ライオンズ、読売ジャイアンツ、阪神タイガースといったNPB球団が女子チームの運営にも積極的に関わり始めています。この流れをどう見ていますか?

川端
 めちゃくちゃうれしいし、これからもっともっと環境がよくなっていくことを願っています。女子プロ野球は活動休止になってしまったけれど、何年かかるかわからないですが、いつか女子プロ野球というトップリーグを作りたいと思っています。

ーー今後のビジョンや展望はありますか?

川端 もっともっと女子野球を盛り上げたいです。私自身、現役を続けている限りは、若い選手たちに負けないように頑張りたいし、身体が動くうちは現役を続けます。若い選手の目標になるような存在として、まだまだできることはあると思うので、九州ハニーズで頑張っていきたいと思います。

(終わり)

【profile】 
川端友紀 かわばた・ゆき 
1989年、大阪府生まれ。2009年の女子プロ野球リーグ第1回合同トライアウトに合格し、ソフトボールから野球に転向。兄で東京ヤクルトスワローズの川端慎吾選手とともに、日本初の「兄妹プロ野球選手」となった。京都アストドリームスや埼玉アストライヤでプレーし、女子プロ野球界で首位打者3回、通算打率3割7分3厘などの活躍を見せた。その後、エイジェック女子硬式野球部の選手兼任コーチを経て、2022年に女子野球チーム「九州ハニーズ」を立ち上げた。

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