ヤクルト川端慎吾はプロ入り時点で「完成されていた」。コーチ時代の八重樫幸雄が感じた天性の打撃センス (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【椎間板ヘルニアからの見事な復活劇】

----川端選手といえば、バットコントロールのすばらしさが特徴です。この点に関して、技術的にはどのようなところが優れているんですか?

八重樫 彼は入団1年目から、「ギリギリまで手元に引きつけて打とう」という意識を持っていました。以前、この連載で話した土橋勝征と同じように、慎吾も試合前のバッティング練習の時、マシンを使ってファールの練習をしていましたから。それが可能なのは、最初に言ったようにタイミングがいいのと、ボールをとらえるポイントがしっかり確立しているからなんですよ。

----右打者の土橋さんは、「あえて一塁側ベンチにファールを打つ練習をしていた」とおっしゃっていましたが、川端選手も同様の意識だったんですね。

八重樫 土橋ほど明確に練習していたわけじゃないけど、慎吾も「ボールを手元に引きつけよう」という意識は強かったですね。そして、徹底的に粘りながら、相手ピッチャーに少しでも球数を投げさせる。そんな意識も強かったんじゃないかな? 彼の場合はローボールが大好きで、低めの球でもきちんとボールをとらえたり、カットしてファールにしたりする技術があったから、首位打者も獲得できたんだと思います。

--------しかし、2015年以降は椎間板ヘルニアを発症。腰の手術も経験し、苦難のシーズンが続いていました。

八重樫 一度、彼が腰をかばいながら歩いている姿を見たけど、まるで老人のようでとても痛々しかったです。最初は「できるだけ手術を回避しよう」と考えていたと思うんだけど、最終的に手術を決断したのは、「手術しなければ引退だ」というところまで追い込まれていたのかもしれない。ひょっとしたら、日常生活に支障が出るまで悪かったのかもしれないですね。

----その後はリハビリを続けながらの出場が続きましたが、昨年は代打の神様として大活躍しました。八重樫さんも現役晩年は代打として活躍されましたが、2021年の川端選手についてはどのように見ていますか?

八重樫 長いリハビリ生活は本当に大変だったと思います。僕としても彼の活躍は嬉しかったし、代打の切り札として、精神的にも、技術的にも「さすがだな」と感心する点がたくさんありました。次回はその辺りをお話ししましょうかね。

(第98回:川端慎吾の打撃は「川上哲治レベル」>>)

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