ヤクルト川端慎吾はプロ入り時点で「完成されていた」。コーチ時代の八重樫幸雄が感じた天性の打撃センス (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【同世代では珍しい、チャラチャラしない「昭和の男」】

――守備に関しては、長く不動のショートとして君臨していた宮本慎也さんがベテランの域に差しかかり、「ポスト宮本」が重要課題となっていた頃の入団でした。

八重樫 入団した時から、慎吾は「ポスト宮本」の最有力候補だったし、レギュラーは確実視されていましたよ。ただ、僕からすればちょっと猫背気味だったのも気になったし、ショートとしてはスピード感がないのも気になっていました。

――入団から数年は故障にも悩まされましたが、2010年あたりから徐々に試合出場も増え、2011年にはショートのレギュラーに定着しました。

八重樫 僕はもうコーチの職は離れていたけど、この頃には課題のスイングスピードも上がっていたし、ゲームへの慣れも生まれていたし、しっかりと下半身を使えるようにもなっていたと思います。とにかく真面目だったのがよかったです。

--------八重樫さんは一貫して「真面目さ」を重視していますよね。

八重樫 ああいうタイプの男は好きですね。川端はあまり感情を表に出すタイプじゃないんです。でも、陰ではコツコツと自分のやるべきことをしっかりできるタイプなんですよ。彼は1987年生まれだけど、同年代の選手と比べても珍しくチャラチャラしていない。ひとりだけ「昭和の男」という感じですね。私生活のことは知らないけど、たぶんふだんから浮ついたところがないタイプなんじゃないかな?

----2015年、真中満監督の下で優勝した時には首位打者も獲得しました。

八重樫 故障に苦しんだことも多かったけど、彼の能力からすれば首位打者というのは当然の結果だと思います。あの年は「攻撃的2番打者」として活躍しましたよね。彼の技術があれば、バントなんかしなくても進塁打は打てるし、ヒットだって打てますから。ホームランは少なかったけど、この頃にはもう力負けしないスイングはできていました。あの年のヤクルトの優勝は、慎吾の活躍がとても大きかったと思うな。

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