「今さら言いなりになるのもダセえなって」。愛と雑草魂と直球を武器に日本ハム・吉田輝星が4年目に挑む (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 前代未聞の"ストレート縛り"は、吉田の潜在能力を信じるからこその育成法だ。付け焼き刃の調整ではなく、命綱であるストレートを根っこから鍛え直す必要があると判断されたからこそ、プロのバッター相手の"ストレート縛り"という無茶振りがなされたのだろう。吉田が続ける。

「僕、3つのことを考えました。まずストレートのなかで緩急をつけること。早いカウントではできるだけ本気のストレートを見せずにこんなもんかと思わせといて、追い込んでから一発、ぶち込む。次に四隅の投げ分けを大事に考える。インコースが効いた状態で投げたアウトコースは、けっこう見逃しの三振を取れたんです。こっちから見たら明らかにストライクのアウトコースを見逃して、バッターが首を傾げてる。ああ、インコースを見せたからアウトコースが遠く見えるんだと思ったら、やっぱコントロールって大事っスよね。

 で、3つ目はいかに力感なく、全力で投げられるか。宮さん(宮西)から『おまえは8割の力で投げられれば最強や』って言われていて、でも8割で投げると8割の球しかいかないイメージだったんスけど、練習してるうちに力の入れどころがわかってきたんです。8割のイメージだとコントロールもつけやすいし、ヒザ下からヒューッと伸びるまっすぐがいく。それがわかったあたりから、真っすぐだけでも抑えられるようになりましたね」

 2021年9月7日、鎌ヶ谷で行なわれたイースタンのジャイアンツ戦で、吉田は"初回、追い込んでからのフォーク"を解禁される。しかしヤンキー漫画をこよなく愛する吉田は、そんな甘い誘惑におとなしく従うようなタマじゃなかった。

「初回、追い込んでからのフォークはOKになったんスけど、どうせ一軍へ行かせてくれないし、今さら言いなりになるのもダセえなって(笑)。もう、真っすぐだけ投げるのにも慣れたわって思って、初回、全部真っすぐ投げたんス。そしたら3者三振っス」

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