「今さら言いなりになるのもダセえなって」。愛と雑草魂と直球を武器に日本ハム・吉田輝星が4年目に挑む (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 そんな吉田はドラフト1位でファイターズへ入団。プロ1年目の2019年、6月12日のカープ戦で先発としてプロ初登板。5回を投げて1失点で初勝利を挙げた。21世紀生まれのピッチャーとして初めての勝ち星だった。

 しかし1年目のその後は3試合に先発して3敗、プロ2年目も5試合に先発して勝ち星なしの2敗。プロ3年目の昨年は1軍での登板は1試合だけ。開幕の時点でローテーションの6番目に滑り込み、4月2日、札幌ドームでマーリンズとの試合に先発した吉田は、2回7失点でノックアウトされる。結局、その後の1軍での登板はなく、昨年は勝ち星ゼロという不本意な1年となってしまった。

 それでもこの1年、吉田はファームで牙を研いでいた。

 身につけようとしていたのは「ショートバウンドになるのかなと思うボールがグーっと伸びてキャッチャーが捕り損なう快感(笑)」を味わえた"農業高校生の泥臭いストレート"をさらにバージョンアップさせた、"雑草魂の込もった砂埃舞うストレート"である。吉田が言う。

「そう、雑草魂は原点ですから......速くて、めちゃめちゃ伸びる、キレもあってコントロールも完璧な、ほら、茂野吾郎(マンガ『MAJOR』の主人公)みたいな、ギューンって砂埃舞うストレート。そんなイメージで投げないとやってられませんよ(笑)」

 やってられない、と吉田が思わず口にしたのには理由があった。

 昨年のイースタン・リーグ、吉田にはある課題が与えられた。それが"ストレート縛り"である。2軍とはいえ、公式戦だ。吉田はプロのバッターを相手にストレートだけで勝負するよう、課題を出されたのである。

「ストレートだけを投げるように言われて、『ああ、これは当分、1軍には行けないんだろうな』と感づいて、もう腹をくくりました。一番長くて4回までストレートしか投げなかった試合もありましたからね。最初に聞いた時は興味本位で楽しそうだなと思ったんスけど(笑)、ファームのバッターは真っすぐをどんどん振ってくるので、変化球を投げずに真っすぐだけで抑えるのはマジ、大変でした。

 たぶん、みんな(ストレート縛りを)知っていたと思いますよ。だってデータを見れば立ち上がりから真っすぐしか投げてこないってことはすぐにわかっただろうし、実際、真っすぐしか狙っていないスイングをしてましたから(苦笑)」

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