八重樫幸雄が振り返るヤクルトの日本一。サヨナラ負けした初戦を見て「オリックス4勝3敗」の予想を覆した (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【広岡、野村、若松、歴代優勝監督との比較】

――八重樫さんは現役時代に広岡達朗監督、野村克也監督の下で日本シリーズを経験しています。日本シリーズのような短期決戦は、「普段通りの戦い方」がいいのか、「臨機応変に柔軟な戦い方」がいいのか、どちらだと思いますか?

八重樫 広岡さんの下で優勝した1978(昭和53)年の時は、チームとしては創設29年目の初優勝だったし、僕たちも初めての経験だったので、決して「普段通り」ということはなかった気がしますね。むしろシーズン中よりも、もっともっと気合いを入れていたし、首脳陣たちも、意識的に選手たちに発破をかけていた感じがします。

――1992(平成4)年、翌93年、野村克也監督時代の日本シリーズはどうですか?

八重樫 あのときは、古田(敦也)とか、池山(隆寛)とか、若くてお祭り好きな選手たちが多かったから、緊張しつつも選手たち自ら盛り上がっていたイメージがあります。野村さん時代は「遊びがない」というのか、ピッチャーの起用についても、「とにかく目の前の試合に勝とう」という意識が強かったと思います。

――92年、93年はともに黄金時代の西武ライオンズが相手でしたから、それも当然のことなのかもしれないですね。ちなみに、八重樫さんが一軍打撃コーチだった2001年の若松勉監督時代、大阪近鉄バファローズとの日本シリーズは、どんなムードで戦いましたか?

八重樫 あの頃はどうかな......。選手たちはのびのびやっていたけど、古田、池山、宮本(慎也)、稲葉(篤紀)など日本一経験者が多かったので、選手たちの自主性に任せる部分が多くて、首脳陣があれこれ口を出した印象はないですね。

――それを受けて、今年の「高津ヤクルト」はどうでしたか?

八重樫 もともと明るい性格だけど、監督になってからは辛抱強さ、我慢強さを発揮しているように見えるし、いい意味で頑固だと思いますよ。さっき言った奥川くんとの接し方についても、初戦でKOされたマクガフの起用についても、選手たちを信頼して、ジッと我慢している姿は伝わってきます。だから、選手たちも安心してのびのびとプレーできるんじゃないかな?

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