五十嵐亮太のボールにみんなが振り遅れていた。ヤクルト1年目に大雨の中で達成した「完全試合」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【1年目から完全試合で胴上げ投手に】

――まさにその試合について伺いたかったんですが、優勝決定戦で先発して完全試合を達成しています。さらに、その後の阪神とのファーム選手権でも先発起用してMVPに輝く好投。この頃には五十嵐さんに対する信頼度も高かったのですか?

八重樫 これも小谷さんから「最後に、亮太に100球ぐらい投げさせてみたい」と言われたんですよ。優勝を決めた試合はロッテが相手で、大雨だったんです。でも、試合日程の都合上、どうしても雨天中止にすることができずに試合を強行しました。ロッテは山本功児が監督だったんだけど、「悪いけど、今日は最低でも5回までは強行して、試合を成立させてほしい」ということで、試合が行なわれたんですよね(笑)。

――試合は6回まで行なわれていますね。

八重樫 だから、一応完全試合ではあるけど、「参考記録」という形になっているんじゃないかな? この頃の亮太は、1年目でまだ体もそんなに大きくなかったですが、ストレートに磨きもかかって二軍レベルなら十分に通用する実力はすでにありました。

――沖縄の宜野湾球場で行なわれたファーム選手権では5回を投げて被安打1、三振は5個で無失点に抑えています。

八重樫 この日は先頭打者を4回もフォアボールで出塁させているんだけど、それでも自慢のストレートでしっかり抑える。結局、大会MVPに輝きましたが、1年目からいい活躍をしたと思います。

 横から見ると、必ずしもホップするようなストレートじゃないんです。でも、バッターはみんな振り遅れて、ボールが通過した後に空振りしていた。彼のピッチングフォーム、そして腕の振りがバッターには合わせづらかったんでしょうね。

――課題だった変化球は順調にマスターしたんですか?

八重樫 当初は「球種を増やして先発で」と考えていたんだけど、なかなか球種も増えないので、カーブ、そしてフォークだけで短いイニングを任せようとなりました。それは小谷さんだけじゃなくて、若松監督の判断でもあるんだけど、彼にとってもいい判断だったんじゃないかな。プロ2年目には中継ぎとして台頭しましたから。

――後に、石井弘寿現投手コーチと「ロケットボーイズ」として注目されることになりましたからね。ぜひ次回も引き続き、五十嵐さんについて伺います。

八重樫 彼が1年目のときの忘れられないエピソードからお話することにしましょうか。次回もどうぞよろしくお願いします。

(第96回:石井弘寿とのロケットボーイズ誕生秘話>>)

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