高木豊から見た三浦体制1年目のDeNAが苦しんだ理由。V戦士コーチ陣には期待も「大輔がやりにくいんじゃないか」の不安もある

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

――攻撃のバリエーションが必要ということでしょうか。

高木 そうですね。攻撃のバリエーションを増やしておかなきゃいけないし、それを実践するための選手を準備しておかないといけません。極論になりますが、ホームランが出やすい関東の球場では長打力がある打者を、それ以外の広い球場では足を使える選手を使うとか、時にはそういう柔軟な発想も必要だと思います。

――足を使えるという観点から期待できる選手は?

高木 ショートの森(敬斗)でしょうか。そういうプレーヤーをチームで育てないといけない。若手を育成する以外ではトレードもひとつの方法ですし、いろいろとやりようはあると思うんです。チームにとって今何が必要かを、多少の"痛み"を覚悟してでもやらないといけないでしょう。

【1998年V戦士コーチ陣への期待と不安】

――投手陣も、チーム防御率が12球団で唯一4点台と苦労しました。シーズン当初は今永昇太や東克樹らを欠き、阪口皓亮やルーキーの入江大生などの若手を使わざるをえない状況でしたね。

高木 それでも、やりようはあったと思います。「もう交代だろう」という時に引っ張ったりしたこともありましたね。大輔には監督としての慣れが必要です。シーズン後半には慣れてきたようにも見えましたが、最初はわからないことが多かったでしょう。まして、ピッチャーそれぞれの感覚は、ファームの監督を1年経験したくらいでわかるものじゃないですよ。そういう意味では、大輔はつらい思いをしたでしょうね。

――ただ、石井野手総合コーチをはじめ、鈴木尚典打撃コーチ、斎藤隆チーフ投手コーチ、相川亮二バッテリーコーチらを迎えた新体制を見ると、巻き返しに向けた球団の意気込みが伝わってきます。中でも、石井コーチにかかる期待は大きいと思いますが。

高木 走塁面にしろ、守備面にしろ、今のチームに足りないものを注入してもらいたいし、琢朗にかかる期待はすごく大きいと思いますよ。ただ、琢朗、隆、鈴木も大輔より年上ですし、「やりにくいんじゃないか」という不安は少しあります。監督が言ったことでも、「大輔、それは違うぞ」と言われた時に言い返すだけのものがあるのか。

 そもそも1998年優勝時のメンバーは、それぞれの選手が「このチームではオレが一番だ」とマウントの取り合いをしていました。"やんちゃ坊主"が集まっての優勝だったんです。今季に優勝したヤクルトは、ベテランに青木(宣親)や川端(慎吾)、中堅に山田(哲人)らがいて、若手に村上(宗隆)や奥川(恭伸)と年齢のバランスがとれていましたが、あの時の横浜は同世代が激励ではなく叱咤しながら勝っていった。「あいつも打つんならオレも打つ」みたいな相乗効果です。それはそれで、チームのあり方としては全然いいと思うんですけどね。

 まあ、みんな大人になっていますから、今はそういうことにはならないでしょうけど。大輔をうまく包んであげられるチームになってくれるといいなと思います。

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