高校中退、戦力外通告、契約白紙...波瀾万丈の歩み。元阪神の右腕が夢見る最後の舞台

  • 阿佐智●文・写真 text & photo by Asa Satoshi

【台湾プロ野球入りを果たすもコロナ禍により契約白紙】

 徳島球団は、国外球団にも声をかけてくれ、これに台湾プロ野球の楽天モンキーズが反応を示した。コロナ禍の影響もあって現地に出向いてテストを受けることはできなかったが、送付したピッチング動画が決め手となり、年明けに入団が決まった。

 しかし、世界中を席巻する新型コロナウイルスの猛威は収まる気配を見せず、台湾はプロスポーツ選手であってもビザの発給を拒み、契約は白紙となった。

 結局、2021年シーズンは徳島インディゴソックスで汗を流した。状況さえよくなれば移籍するということもあってか、慣れ親しんだ先発ではなく、クローザーを務め、リーグ2位の11セーブを挙げた。

 この夏に話を聞いた時、福永は「来年のことはわからない」と言っていた。

「もう野球は終わりかもしれません。12球団合同トライアウトを受けるつもりはないし、独立リーグもこの1年で終わりというのは決めていました」

 移籍先の橋渡しまでやってくれた古巣に対し、福永は"0円契約"を受け入れた。苦しい独立球団の台所事情を慮り、プレーの場を与えてもらっただけでも十分だった。それでも、ひとりのプロアスリートとして日々の生活をしていかなければならない。今年はそれまでの蓄えを切り崩しながら選手を続けたが、そのような生活はいつまでも続けられるものではない。

 高校中退から独立リーグを経てたどり着いたNPBという夢の舞台だったが、そこへの復帰が叶わなければ、別の道を模索しなければならないことは十分にわかっている。

 だが、福永にはもうひとつの"夢"がある。野球の本場、アメリカでプレーすることだ。阪神への入団前、四国アイランドリーグが選抜チームをつくり、北米の独立リーグと交流戦を行なったのだが、これに参加した福永はその時のボールパークの雰囲気が忘れられないという。

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