「あの子はここまでなのかな...」から高橋奎二は大きく成長。石川雅規らヤクルト投手陣が紡いだ物語 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

日本シリーズ第4戦で好投したヤクルト・石川雅規日本シリーズ第4戦で好投したヤクルト・石川雅規この記事に関連する写真を見る■41歳、石川雅規がプロ20年目で日本シリーズ初勝利

 高橋が2回7失点とメッタ打ちを食らった楽天との練習試合の翌日、ヤクルト投手陣の練習風景にはちょっとした変化があった。石川は小川泰弘と組んでのキャチボールを常としていたのだが、この日の相手は高橋だった。

「僕なりに(高橋のピッチングに)感じることがあったので、『一緒にやろうよ』と声をかけました」(石川)

 ふたりは同じ左腕で、先発ローテーションの座を争うライバルだったが、石川はキャッチボール中に高橋のテイクバックを再現したり、捕手役となって『今のは悪くないよ』と言ったり、チームメイトとして手を差し伸べた。結果的にふたりとも開幕を二軍で迎えることになるのだが、それでも石川は高橋に積極的にアドバイスを送っていた。

 その石川も高橋同様、シーズン途中から自力で一軍の先発ローテーションを勝ちとった。好投を続けることで、6年前のソフトバンクとの日本シリーズで2敗した悔しさを晴らすチャンスがめぐってきた。シリーズ前、石川はこう語っていた。

「あの時の思いを消化できたかと言えば、悔しい思い出しかないですし......でも、なんとか借りを返せる舞台がやってきた。どういう場面で投げるかわからないですけど、そういう思いを含めて、1球1球をキャッチャーのミットをめがけて投げたいです」

 雪辱を晴らす機会は、第4戦の先発を任される形で訪れた。石川はいい感じで力の抜けた"らしい"ピッチングで、オリックス打線を6回3安打1失点(自責点0)に抑え、日本シリーズ初勝利を挙げた。

「(プロ20年目で)いろいろな1勝というのは重いですけど、この日本シリーズに来るまでも長かったですし、自分自身に『よかったね』と言ってあげたい」

 ヒーローインタビューのお立ち台でそう話すと、石川は満面の笑を見せた。

 それにしても今回の日本シリーズは、チームの長年にわたる最大の懸案事項であった先発投手陣のピッチングは見事なものだった。

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