「あの子はここまでなのかな...」から高橋奎二は大きく成長。石川雅規らヤクルト投手陣が紡いだ物語 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 左のエース誕生の期待が高まった入団6年目の今シーズンだったが、春季キャンプで大きくつまずく。楽天との練習試合で2回を9安打3四球7失点。球数は70球を数えた。

 高津監督はこの日のピッチング、キャンプでの状態を見て「少しずつ成長してきたのですが、あの子はここまでなのかな......。ど根性はあるんですけどね」と、寂しそうな表情を見せた。

 それでも高橋は「前半戦は自分のなかで苦しい思いをしていたので、なんとか後半戦で巻き返すぞという気持ちでやっていました」と、持ち前の"ど根性"で二軍からはい上がってきた。

 6月に一軍昇格を果たすと、勝ち星こそ恵まれなかったが、課題だったコントロールが安定。伊藤智仁投手コーチからの「8の力で10の力を出す」という助言を胸にマウンドに立ち、集中力が切れると修正が効かなくなる悪癖も改善。

 クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージでは、苦手としていた巨人打線を6回無失点。そして日本シリーズ第2戦では、133球の熱投でプロ初完投・初完封勝利。チームに大きな流れを呼び込んだ。

 神戸での第6戦前日の練習日、高津監督に「高橋投手は期待以上の成長ですか?」と聞くと、「最初に見た頃の奎二と、今の奎二とではずいぶん差があると思います」と言って、こう続けた。

「(成長した部分は)心かな。技術も上がり、体も強くなりましたけど、精神的に成長しましたよね。もともと負けん気の強い子でしたが、少々のことではくじけなくなりました。これまでも絶対に手を抜くことはしないし、常に一生懸命やる子なのですが、ちょっと脱皮したというか......。

 日本語としておかしいですけど、今だけを全力じゃない、いろいろ考えて全力をやるようになったというんですかね。ここまでになることを想定していなかったわけじゃないですけど、まだまだ成長の途中だと思っています」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る