山本由伸の女房役・若月健矢が語る何よりもすごいと思うのは「イニング間、ベンチ裏で...」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 開幕戦では頓宮と組んだ山本だったが、頓宮と組んだのは開幕戦を含めて3試合。シーズン前半の12試合で山本は伏見と組んでいた。それが7月9日、東京オリンピック前の最終登板となるホークス戦で今シーズン初めて若月と組むと、山本は6回まで毎回ヒットを許しながらも粘りのピッチングを見せて、7回をゼロに抑える。若月が言った。

「いろんな球種を投げられて、コントロールもすばらしいんですけど、なによりもすごいと思うことは、たとえば序盤にちょっとフォークの調子がよくない時、次の回にしっかり修正してくるところです。一日中、これがダメ、ということのないピッチャーなんですよね。なぜかと聞かれれば、イニング間、ベンチ裏で何やらフォームチェックをしているんですよ。そういうことに長けているから、修正能力が高いんじゃないですかね。イニングが終わってベンチへ引き上げる時、よく言うんですよ。『今はこのボール、調子悪いけど、次の回にはなんとかしますから大丈夫です、サイン出して下さいね』って......で、次のイニングになると、本当にちゃんといい球が来る。さすがだなぁって思います」

 日本シリーズを前に年間の最優秀バッテリーを表彰する『2021プロ野球最優秀バッテリー賞 』が発表され、パ・リーグは山本と若月のバッテリーが受賞した。山本は今シーズン、26試合に登板して18勝5敗、防御率1.39をマークしたのだが、若月と組んだ7月9日以降の11試合は10勝0敗、防御率0.72と抜群の数字を残している。

 しかも、とりわけ圧巻だったのは、この数字のなかに含まれない1勝だ。

 クライマックスシリーズのファイナルステージ、第1戦。山本はマリーンズ打線を完封。初回、味方が挙げた1点を守り切る"スミ1完封"は、被安打4、無四球、10個の三振を奪うという、126球で紡いだじつに美しい芸術作品だった。

 そのなかで、若月の記憶のなかに鮮烈に残っている1球は、1回表のカーブだ。ツーアウト二塁で4番のブランドン・レアードに対して、フルカウントから投じた128キロのカーブに、レアードのバットが動かない。この見逃し三振は、若月にとっても重要な意味があったのだという。

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