「ここで結果を出さなければただの恥さらしだ」元DeNA寺田光輝はプレッシャーを力に変えて医学部受験に挑んだ (2ページ目)

  • 村瀬秀信●文 text by Murase Hidenobu
  • photo by Sankei Visual

石川 2年目の沖縄キャンプにはほかの選手と一緒にキャンプインしたんですよね。さあやっと勝負だという感じですか。

寺田 はい。でもそこで今度は肩を壊してしまいました......。

石川 ああ......今度は肩ですか......。

寺田 これも1年目まったく働けなかった焦りで、オーバーワークになってしまったことが原因だと思うんです。最初は筋肉の炎症という話で、2週間ぐらいでよくなると言われていたんですけど、それ以上に深刻だったのが、今度は感覚がおかしくなってストライクが全く入らないイップスになってしまったんです。最悪ですよね。

石川 つらいですね。やらなければ後がない崖っぷちの状況で、またケガをしてしまう。しかもイップスまで発症して、さぞや絶望されたと思います。以前あるケガをしたアスリートに聞いたことがあるのですが、ケガをしたことで「全員にバカにされているような気がした」と精神的にかなり追い込まれたそうですが、寺田さんは周りの目が気になることはありましたか?

寺田 幸い僕はないですね。でも、それはチームに恵まれていたからかもしれません。チームメイトは先輩も後輩も本当にすごく優しい人ばかりで、ライバルであるはずの同じサイドスローのピッチャーでもアドバイスしてくれるような関係だったんです。結果が出なくてもヤケになることもなかったです。プロ野球選手って、一軍も二軍も関係なく、自分のやることを当たり前にやるという人たちなんです。なかでも、とくに梶谷(隆幸/現・巨人)さんの練習量は本当にすごかったですけど、周りのみなさんがプロとしての誇りであり責任感を持って日々を過ごしていたので、僕もそこは気持ちを折らずにいられたのだと思います。

石川 かっこいいですね。

寺田 ただ、肩がよくなって試合に登板すると、3〜4試合連続でボコボコに打ち込まれたんですね。ストライクも入らない。入れば打たれる状況に、さすがに心が折れて......気がついたら就職情報サイトに登録していました(笑)。

石川 切り替えが早い(笑)。

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