「こんな状況になるとは...」自ら驚く成長で高校通算70本塁打。恩師たちが明かす日本ハム2位・有薗直輝の魅力 (3ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

「打てなかったら守れ。守れなかったら走れ。走れなかったら声を出せ」

 高倉監督が「なにか1つでもチームの役に立とう」との意味を込めて、選手たちに繰り返し説き続けてきた言葉だ。それを3年間体現し続けたのが有薗だった。

「苦しい時や悩む時もあったでしょうけど、常に本音、本心でチームのために行動できる素直な人間性。それこそ彼が成長できた最も大きな要因だと思います」

 有薗の人間性について、日本ハムの高橋憲幸スカウトは次のように語る。

「仕草や立ち居振る舞いを見ると、誰とでもうまくつき合っていけそうです。かわいがられることも大事な世界で、謙虚さがあってあいさつもしっかりできるので、そうした部分では心配していません」

 また技術面でも「打撃にクローズアップされていますが、守備がいい。スローイングが安定していて肩も強い」と、高橋スカウトは守備力の高さも評価している。

 守備がいいことは打撃にも大きなメリットがある。バットは金属から木製に変わり、投手のレベルも格段に上がるため、ほとんどの高卒ルーキーは対応までに時間を要す。ただ守備がよければ、打撃に多くの練習時間を割くことができる。

 それに守備ができれば、ファームのレギュラーとして出場の可能性がグンと上がり、守備固めを出されることも少なくなれば、当然打席に立つ機会は多くなる。高校の時のように、早くからの実戦経験が有薗の飛躍的成長を後押しする可能性は十分にある。

 高倉監督は「守備に対する興味が強く、暇さえあればノックを受けている。あれほどのスラッガーでそんな選手は珍しいんじゃないでしょうか」と驚く。

 そして体の強さ、意志の強さも大きな武器になるだろう。じつは有薗は、3年間一度も練習を休んだことがない。最後の夏が終わってからも、チームの練習がある日は休まず参加するなど、いまだ皆勤賞を続けている。

 守備練習では本職の三塁だけじゃなく、遊撃や二塁のポジションにも入り、木製バットでの打球も力強さを増すばかりだ。

 プロ野球選手になってからの目標について聞くと、有薗は「球界を代表する選手になって、子どもたちに夢や希望を与えたい」と力強く語った。

 これから身を置くのは、相手チームだけではなく、チームメイトともしのぎを削らなければならない世界だ。そんな世界で有薗がはい上がっていく最大の武器は、誰よりも素直で純粋な思いなのかもしれない。

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