「こんな状況になるとは...」自ら驚く成長で高校通算70本塁打。恩師たちが明かす日本ハム2位・有薗直輝の魅力

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 この有薗の決断は間違っていなかったと語るのが松井監督だ。

「高校1年生の春から使ってもらったのは大きかったと思います。やっぱり公式戦で選手はうまくなりますから」

 有薗自身もそれが貴重な経験になったと語っている。

「高校野球の難しさ、厳しさを早くから経験できたことは大きかったです。公式戦で自分の課題がわかり、それを克服しようと練習に取り組むことができました」

 1年春にいきなり県8強入りと扇風を巻き起こし、その3番、4番が1年生の板倉と有薗だったことも千葉県の高校野球関係者、ファンを驚かせた。さらに1年夏、有薗は5回戦の市原中央戦でZOZOマリンスタジアムのレフトスタンドに本塁打を叩き込む。この衝撃的な一発で、有薗は1年生にして「ドラフト候補」として注目を浴びることになった。

 一方で、その後は厳しいマークを受けることになる。1年秋の志学館戦(3回戦)では初回にタイムリーを放つが、その後は2度にわたってフェンス手前に守る外野手に打球を処理されるなど、チームも敗れた。

 帰りのバスで有薗は「次は外野手の前に落とせるヒットが打てるようにします」と語った。それに対し高倉監督は「そんな寂しいことを言うな。今度はフェンスを越えるように打つんだ!」と伝えた。持ち味を失わせるのではなく、常に上を目指す姿勢を植えつけた。

 県内でも屈指のスラッガーとなった有薗だが、最後の1年はほとんどストライクが来ず、来たとしてもそのほとんどがアウトコースだった。ならばと、有薗は逆方向への打撃を強化し、今春になるとライト方向への本塁打が急増した。

 まともに勝負されなくなった今夏は、高倉監督が「ボール球には手を出さず、次の打者につなごう」と伝えると、そのとおり四球を選んだ。明らかに勝負を避けられた四球でもムッとした表情を見せることなく、丁寧にバットを置いてから一塁へ走っていく姿に、高倉監督は感心したという。

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