ヤクルトが2年連続最下位からのリーグ制覇。サクセスストーリーを完結させた「4つのシンカ」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

「みんな笑っていますよね。今年は負けてもそんなに大差はつかないですし、ノリさん(青木宣親)を筆頭に、『今日もよかった。明日も頑張ろう』という声が聞こえてきます。このチームは強いと思います」(大西広樹)

「ベンチから監督の声が聞こえてくることもありますし、使ってもらえることになんとか応えたい。監督の『絶対に大丈夫だから』という気持ちを持って投げています」(星知弥)

「僕は96敗を経験しているのですが、この4年間で本当にチームが変わったと実感しています。とてもいい雰囲気で、自分もこの流れに乗って......と考えているのですけど、もっと自分の役割を果たせたんじゃないかと思っています」(山崎晃大朗)

 青木はこうした選手たちの姿に「今年は、僕はそんなに声を出していないんですよね」と言った。2018年にヤクルトに復帰して以降、先頭になって声を張り上げてきた。

「選手への声かけは(山田)哲人がやってくれて、ベンチでは嶋(基宏)がチームを盛り上げてくれる。僕はそれを頼もしく見ています(笑)。若い選手たちも声が出るようになって、各々が持ち味を発揮し、チームとしていい集合体になっていると思います」

 チームの雰囲気について選手が話す時、「嶋さんが先頭になって」と、必ず移籍2年目のベテラン捕手の名前が挙がる。

「雰囲気や空気がいいところには、必ずいい流れがくるし、勝っていれば自然と雰囲気はよくなります。今のチームはそういう状況で、みんなのモチベーションが高いです」(嶋)

 首脳陣も「ベンチでの嶋の存在は本当に大きいです」とことあるごとに強調した。

「試合に出たいという感情を抑えて、チームを鼓舞してくれました。選手たちも信頼していますし、それが今年大きな連敗がなかったことのひとつの要因だと思っています」(衣川篤史バッテリーコーチ)

 ベンチの一体感は、グラウンドやブルペンにも波及した。タイムリーが出れば、全員が自分のことのように喜ぶ。殊勲打を放った選手は、塁上からボディーパフォーマンスでベンチの盛り上がりに応える。

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