ヤクルト真中満監督の勘違いドラフトの裏側。フロント陣は「髙山俊に連絡だ!」から大爆笑

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【2015年ドラフト会議、無念のガッツポーズの真相】

――現役引退後、真中さんは二軍監督を経て一軍監督となり、2015年にはチームを優勝に導きました。選手としてではなく「監督・真中満」はどうご覧になっていましたか?

八重樫 彼の性格そのままに、選手たちにのびのび、楽しくやらせていた印象です。勝敗に一喜一憂しないでやらせていた印象ですね。それが、選手たちに受けて就任1年目でのリーグ制覇につながったんじゃないかな。選手としてもやりやすいと思いますよ。

――しかし、就任1年目で優勝したものの、その後は低迷が続きました。

八重樫 明るい性格でのびのびやらせるのは、一時期は効果が出るけど、どうしても緩みがちになるという欠点があります。96敗した2017年は、ケガ人も多かったし、ひとりで責任を背負い込んでいたと思うよ。

――ぜひ、八重樫さんにお聞きしたかったのが、2015年ドラフト会議。明治大学・髙山俊選手の指名に際し、真中監督が抽選を外したにもかかわらず、引き当てたと勘違いをしてガッツポーズをした一件です。八重樫さんは当時スカウトでしたよね?

八重樫 あの日、僕は控え室でみんなでモニターを見ていました。控え室にはフロント、スカウトを含めて10人ぐらいいたかな。モニターからは音声は聞こえないんだけど、真中がガッツポーズをしたから、みんなで「やったー!」と握手をしたんですよ。

――ところが、実は交渉権は阪神・金本知憲監督が引き当てていたということが判明します。控え室ではどんな状況だったんですか?

八重樫 みんなで喜んで、「よし髙山に連絡だ!」という雰囲気になったんだけど、モニターを見ていると、どうも雲行きが怪しい(笑)。それで、「ちょっと待て!」となって、モニターを見ていたら交渉権は阪神にあることがわかった。控え室内は大爆笑でしたよ(笑)。

――抽選に外れてガッカリするのではなく、大爆笑だったんですか?

八重樫 そう、大爆笑(笑)。その日、ドラフト会議が終わったあとに食事会があったんですが、その場に真中が入ってきた時に、みんなで大拍手しました。真中も「すいませーん」と笑顔で謝っていましたよ。今も評論家として人気者だけど、誰からも愛される明るいキャラクターはずっと変わらないんだよね。現役時代は個性的なバッティングでいい選手だったし、引退後も明るく楽しい。彼は現役時代も今も裏表がないから嫌味がないんです。最近はテレビをつけると真中がよく出ているけど、何だか僕もうれしくなりますよ。

(第89回につづく)

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