大谷翔平の活躍に門田博光は「ワシの頭では理解できん。スーパーマンや」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

「トリプルキング(三冠王)も狙える位置におった夏場に、南海の身売りの話が出るようになって、そこからマスコミがどこへ行くにもついてくるようになってな。今みたいに品のいい記者ばかりじゃない時代や。そこからいつもどおりの野球ができんようになって、ペースをガタガタにされたんや」

 門田はなによりも集中力を大切にする打者だった。とくにアキレス腱を断裂してからは「鳥肌が立つほどの極限の集中力」で打席に立ち、1試合に1球あるかの失投をスタンドへ打ち込むべく、神経を研ぎすました。

「30本と40本を打つヤツの差は、難しいボールをどれだけ打てるかという技術の差やない。打てるボールをどれだけミスショットせずに打てるかという集中力の差や」

 打てる球を打ち損じないため、集中力を削ぐような行動は徹底して遠ざけた。DHになって以降、試合で自軍が守りの時はベンチに座らなかった。一度でも気持ちを緩めると、再び集中するのが難しいと知ったからだ。オールスターのホームラン競争への出場を断ったことがあったのだが、その時も「遊びのスイング」をして形が崩れること、集中力が途切れることを嫌ったからだ。

 ゲレーロJr.を追う立場となった大谷の終盤戦について展望を向けると、門田は少し声を落として言った。

「ひょっとすると、ここからシーズン終了まで1本も出んかもしれんな」

 その時点でエンゼルスはまだ18試合を残していたが、門田の予言めいた言葉には重みがあった。その時は「みんなが応援している時に、これは書かんといてや」というひと言もついてきたが、そんなやりとりを受けての45号直後の電話だった。

 話題はそこから露骨になってきた四球攻めへとつながった。

「とくに敬遠が堪えるんや。極限まで集中力を高めて打席に入ったら、フワーッとした球を4つ見せられて歩かされる。その4球を投げられている間、集中力を切らさんように立っとくことがどれだけ大変なことか。今はボールも投げんと歩かされる、なんとかというあれもバッターにとってはたまらんやろうけど。『さぁ、勝負や!』と打席に入ろうとしたら、『どうぞ一塁に歩いてください』って。オレやったらそれだけでガタガタになってしまうわ」

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