ヤクルト雄平はなぜ引退試合後も練習を続けるのか。「今の自分の体がなくなってしまうことが怖い」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 10月5日、雄平は都内にある球団事務所で引退会見を開いた。まだやりたい気持ち、まだやれるという気持ちのなかで、一軍の戦力になれなかったことが引退を決意した大きな理由だった。

「野球とは楽しいものです。でも、そのなかに苦しいことや辛いことがたくさんあります。本気だからこそ苦しいですし、苦しいことのほうが多かったかな。僕は不器用でコツを簡単に見つけにくいタイプだったので、結果的に練習をたくさんすることになりました。それだけやらないと、見つからないということです。

 練習でちょっとでもいいことがあれば『もっともっと』となるし、試合でヒットを打ったり、いいプレーができたり、みんなで優勝をわかち合えたり......そういう喜びのために苦しい時でも頑張れたんだと思います」

 引退後も練習を継続することについて質問すると、「いくつか理由があります」と答えて、話を続けた。

「子どもの頃からずっと体を動かしてきて、それを急にやらなくなるのが怖いんです。今の自分の体がなくなってしまうことへの恐怖。この感覚は引退を決めてから何日も続いていて、それが練習を継続するひとつの理由です。そして一番は、自分の体を実験台にできるチャンスということですね。これからも野球を追求していけたらと思っています」

 今後については「まだなにも決まっていないんです」と話した。

「野球に携わっていきたいですし、いずれは(指導者として)自分の経験を伝えられたらいいですね。そのためにもいろんな視点から野球を学んでいけたらと思っています」

 会見終了後、雄平は「なんだか自分の話だけになっちゃった。もっとファンの方へ感謝を伝えたかったんですけど、大丈夫でしたか」と苦笑いした。

 新しい世界でも雄平は"練習の虫"となり、またファンの前で楽しい姿を見せてくれるはずだ。

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