この先、ヤクルト宮本慎也監督の誕生はあるか。八重樫幸雄が「指導者として覚えたほうがいい」と考えること

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【「宮本慎也監督」の誕生はあるのか】

――何年か先に「ヤクルト宮本慎也監督」は実現しますかね?

八重樫 どうなんだろうね......。前回、ヘッドコーチをやめる時に、慎也の中には球団に対して相当な不満もあったと思います。それをきちんと整理できるのか、水に流せるのか。慎也自身にも意固地なところがあるから、彼自身も変わる必要があるかもしれない。もちろん、球団もさまざまな課題を改善する努力をする必要がある。双方が少しずつ変わる時、そこに再び接点ができるんじゃないかな。

――うーん、何か奥歯にものが挟まったような発言ですね(苦笑)。

八重樫 慎也は頑固ですからね。そこがいいところなんですけど、慎也もまだ50歳を過ぎたばかりでしょ。まだまだ若いんだから、いろいろ経験を積むのもいいと思いますよ。そこで何をつかめるか、どんな考え方になるのかで変わってくるんじゃないのかな? 今年は(高津)臣吾が頑張っているから、まだ「宮本監督」の機運は高まっているわけじゃないから、焦ることはないですよ。

――確かに、3年契約で今年は就任2年目の高津監督が好結果を出している時に考える話題ではないですよね。

八重樫 臣吾のやり方と慎也のやり方とはまったく違うだろうから、選手も戸惑うと思うんですよ。だからこそ慎也は腰を据えて、ここ数年はじっくりと監督業を学ぶ時間に充ててほしいですね。

――前々回、前回、そして今回と宮本さんに対する、八重樫さんの言葉はすごく温かいですね。あらためて、八重樫さんからご覧になった宮本さんの印象について、最後に聞かせてください。

八重樫 僕はすごく好きなタイプなんです。自分の信念を持った有言実行の男ですから。ただ、だからこそそれに固執しすぎるあまり、周囲との軋轢を生むこともあると思うんですよ。それが首脳陣批判、球団批判のようにとらえられるのは彼にとっても本意じゃないと思うんだよね。でも、僕は思ったことをズバッと言えないんで、慎也のそういう性格は「うらやましいな」というのが本音なんです(笑)。

――そこは八重樫さんにない部分なんですね(笑)。

八重樫 彼は絶対にイエスマンにならないですから。何か疑問があったら、きちんと本人に「どうしてですか?」とか、「自分はこう思います」と伝えることができます。僕もイエスマンにはならないタイプだと思うけど、彼のようにハッキリと自分の意見を言うことができないから、その点は本当に尊敬しますよ。

(第87回につづく)

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