【独占インタビュー】斎藤佑樹が悔やむあの夏「投げ方が狂って、歯車がズレ始めていた」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

── 痛みがひどかった分、アドレナリンが出たのかもしれませんね。

「あれだけいろんなデータを見て準備をしているのに、いざ勝負となったらデータを無視してストレートを投げたくなってしまう。でも、そういうときこそ丁寧にいかなきゃいけないのに、腕が振れる分、コントロールがアバウトになってしまって......そんなこと、これまでに何度も繰り返しているんですけどね(苦笑)」

── カットボールを知野直人選手に、ツーシームを田中俊太選手に、いずれもツーベースヒットを打たれて1点を失いました。あの日は1イニング、21球を投げて、1失点という内容です。投げ終えてから、どうしたんですか。

「すぐに病院で診てもらったら右肩の関節唇と腱板が損傷していると言われました。それは覚悟していましたけど、気持ちのどこかでまだ淡い期待を抱いたりする自分もいて......。もちろん、魔法のような治療法があるはずもなく、やっぱりダメなのかなと頭の半分では考えながら、もう半分ではシーズンが終わったら1カ月、地道にストレッチをして治療に専念すればどうなるのかな、なんてことをやけに現実的に考えていたりする自分もいたんですよね」

── 相変わらず、ショックを受けていてもおかしくない状況で、冷静ですよね。ひとりなのに、叫んだりわめいたりすることはないんですか。

「ないない(笑)。それはまったくないですね。逆に、いつもそうやって言われて、感情を出せない僕って、もしかしたらちょっと寂しいヤツなのかなと思ったりして(苦笑)」

── 希望と絶望の狭間で揺れていた斎藤さんの気持ちが、最終的に引退のほうへ振り切れた時の気持ちを思い出すと、どんなことを感じていたんですか。

「最初に浮かんだのは、次に何をやるべきか、ということでした。普通なら過去を振り返ったり、懐かしんだりするんでしょう。でも、そういう感じじゃなかったかな」

── たしかに、それは斎藤さんらしくない。で、次に何をするんですか。

「いろんなことをイメージしていますけど、いまの自分が何をすべきか、もう少し考えたいなと思っています」

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