中日は「投高打低」もドラフト1位は高校生投手か。地元には好素材の選手が何人もいる

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

チーム事情から見るドラフト戦略2021~中日編

 あくまで個人的な意見だが、ペナントレースを見ていてプロらしい打線の迫力が感じられなくなったチームがいくつかあり、中日もそのひとつである。

 チーム打率.239、チーム本塁打65本、得点363(9月28日現在、数字は以下同)は、いずれもリーグワースト。それでも先発の大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介や、リリーフ陣の祖父江大輔、谷元圭介、福敬登、又吉克樹、ランデル・マルティネスらの奮闘で、チーム防御率3.24は堂々のリーグトップ。投手陣の踏ん張りがなければ、間違いなく最下位に甘んじていただろう。

 今シーズン、おもにレギュラーとして出場している選手の打率は、京田陽太(.267)、大島洋平(.297)、ビシエド(.277)、福田永将(.234)、高橋周平(.258)、木下拓哉(.274)......と、たしかに心細い気もするが、ほかにいい打者がいないのかとなると、今の中日は全然そんなことはない。

 ファームを見渡せば、ルーキーイヤーの昨年以来、コンスタントに成績を残して不動のリードオフマンになりつつある岡林勇希に、チームトップの快足を誇る高松渡。ケガで離脱中だが近未来の4番・石川昂弥、フルスイングが魅力の石垣雅海、そして根尾昂......。

 一軍が打てないからドラフトで打者の補強を......などと短絡的に考えていいのだろうか。上で記した「ヤングドラゴンズ」の素質と力量を考えたら、彼らを凌ぐ野手など、そういるものではない。むしろ多少のリスクはあるが、積極的かつ根気強く一軍で起用して、試合のなかで育てる。

 最近なら、村上宗隆(ヤクルト)を筆頭に、小園海斗(広島)、紅林弘太郎(オリックス)など、あちこちで成果の芽が出始めている。

 せっかく投手陣に「王国」の兆しがあるのだから、さらに厚みを加えて、本物の「投手王国」を築き上げたらどうだろうか。それが本当の意味での補強になるのではないか。チーム防御率2点台の投手陣を構築すれば、少なくとも中期的なチームづくりの根幹は見えてきそうだ。

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